第21話マリーの初等部学校生活 【上】

 子爵・男爵と平民の希望者は6歳から12歳まで初等部学校で基礎学力と魔法等の勉強をしている。


 魔法が使えた為、男爵家の養子となったマリーは今日学校へ入学した。

「結構たくさんの子が入学するのね。仲良くできるといいけれど睨んでいる子が何人かいるわ。面倒くさいな。」

 自分の顔が可愛いことを自覚しているマリー。ざっと周囲を見渡し自分を睨んでいる子の顔を確認すると寮へと向かった。

 寮は全員個室で学年ごとに分かれている。無用なトラブルを避ける為、寮監は伯爵家以上の爵位の子息令嬢が担当していた。貴族が揉められないように。


 マリーはすべてAクラスだ。クラスは2種類ありA~Eに分かれている。

 日常で色々なタイプの子供とかかわれる様に、各クラス平均に割振られた共通クラスと、成績で変わる授業のクラスだ。


 翌日、Aクラスに行くと担任のコートニー・ハロー先生が生徒達を待っていた。

「始業までは時間があるからゆっくりしていて大丈夫よ。」

 コートニー先生は優しく微笑む。始業の鐘がなると、遅れる子が5人もいた。

「遅れてきた人は立ち上がって荷物を持ちなさい。遅れた理由の説明を講師室でしてきてくださいね。マートンよろしくね。彼についていきなさい。」


 先生に自己紹介と授業の説明が始まった。

科目は数学などの基礎科目とマナー、ダンス、音楽、第2語学等の選択科目、魔法、体育の実技科目に分かれている事や行事や注意事項の説明をする。


 遅れた子達が戻り、全員の自己紹介が始まった。遅れた子は授業クラスが1つ下げられたそうだ。その後は各クラスに分かれて、最初の授業が始まる。今日は初日なのでどのクラスも自己紹介と今後の予定を話して終了した。


 次の日教室に来ると、すでにコートニー先生が教室にいる。

マリーは挨拶をして席に着くと、隣の席の子が話しかけてきた。

「おはよう、マリー・モコノ男爵令嬢。授業クラスではお会いしなかったわよね。」

「おはよう、リオ・ネイロさん。そうですね、授業によって変わりますものね。」

 この人ドレーブ家領の平民だったわよね。昨日は子爵家と男爵家に挨拶してた子だったかな。 早速貴族のコネを作ろうとしている感じだけど、6年もあるんだから最初は様子見の方が良いと思う。貴族の子はすり寄ってくる人に敏感だから、甘く見られるか嫌がられそう。


 リオが後ろの席の子にも話しかける。

「おはよう、リーリン・ハクさん。今日は音楽からですってね。」

「おはよう、マリー・モコノ男爵令嬢、リオ・ネイロさん。私音楽好きだから楽しみなの。」

「おはよう、リーリンさん。音楽はやるより聞く方が好きなの。両親が音楽が好きで私の為に高名な音楽家を呼んでパーティーを開いてくれるのよ。今度是非いらして。」

 そう言って得意げなリオに、2人とも機会があればといってほほ笑んだ。


 鐘がなり、先生からの朝の朝礼が終わると授業に向かうため移動する生徒達。

「私はBクラスなの。お二人は昨日お会いしてないから違うクラスよね。」

「ええ、私達はAクラスなの。ではまた明日、行きましょうかハクさん。」

「ええ、ではまたネイロさん。」

 音楽の勉強は有名な講師を呼んだり楽器を揃えたり結構お金がかかるので、リオは2人は自分より下のクラスだと思っていた。驚くが顔には出さずに挨拶だけして、自分も移動する。

 それを見ている生徒達も、移動していった。


 学校も暫くすると、同じ派閥同士纏まって行動するようになる。

 マリーのグループにはコリー・カーン子爵家令嬢、リオ・ネイロ、エバ・ガイダの4人。

コリーが我儘で自分より下の地位の人に対して威圧的なため、マリー以外の子は子分扱いだ。

それを見ている他派閥の子達も近づいては来ない。


 バレット家の派閥は身分関係なく互いに協力し合い良好な関係を築き、他派閥や他クラスの子たちとも交流をしているし、ロレーヌ家の派閥も身内の結束が強いが、他派閥であっても普通に交流している。


 他の人達とも関係を築きたいが、自分の派閥を無視するわけにはいかない。

困ったマリーは男爵家に相談の手紙を出す。翌日の放課後、ダンがマリーを訪ねてきた。

来客室に入るとすぐ防音障壁を発動するダン。


「久しぶり、マリー。元気そうで安心したよ。それで、マリーはどうしたいのかな。」

「私は、コリーさんに態度を改めてもらいたいですわ。他の方達と交流したいのです。

でもコリーさんの影響で、他の派閥の方達に距離を置かれています。現状のままだと、今後の社交に悪影響を与えてしまいます。」


「そうだね、じゃあどうするのかな。」

「コリーさんに人目のある時に注意を促し、彼女の態度が変らない、又は私に攻撃を仕掛けるのであれば飛び級して、新しい場所へ移動してしまおうと思います。」

「そうだね、注意しておけばマリーがコリーと違うと態度で示せる。

その結果コリーと揉めても飛び級してしまえば、争いに発展して足を引っ張られることもない。

 綺麗ごとを並べて非難する良い子ではなく、周囲に貴族としてコリーの態度が駄目だから派閥全体を考えて注意していると思わせるんだよ。


 後証拠を集めてからにしてね。映像と音声両方いるから、集めたらマリーと男爵家双方で保管しておこう。これ、映像と音声録音できる魔道具ベルト。頑張ってね。

 飛び級は合格したのかな、まだなのか。じゃ合格と証拠集めが終わったら、皆のいる所でドーンとね。


「こんな事していいと思っているの、子爵家の私に。」とか言いそうだな。

男爵家の総意だって言っていいよ。あそこの子爵微妙な立ち位置だから。

親に言えば私も親が対応するってね。その方が楽だけど、貴族対応の練習になるからな。」

 ダンは笑っていて楽しそうだ。優しそうな好青年だがやはり貴族だ。


「相談にのって頂き、ありがとうございます。」

「お礼なんて、家族なら当然だよ。今度飛び級のお祝いを皆で言いに行くからね。」

「はい、今日はありがとうございました。」


ダンに言われたとおりに、ベルトをして証拠集めに奮闘するマリー。

 コリーがリオとエバの学食席取りの失敗に、2人を罵り叩こうとするのを止める自分を撮る。

 子爵家が2人の実家に口利きをすると約束して、授業中コリーが答えられるように正解を教えたり、コリーのレポート課題をやらせているのを止めるように諭す自分を撮る。


 そして1年生が終わる頃、マリーは5年生への飛び級が決定した。

やっと、この証拠集めから解放される。

 この間全然、他のクラスメイト達に避けられていたドレーブ家の派閥。


 週末は男爵家に帰り、お茶会周りをして4年生の生徒3人と仲良くなった。

飛び級した後の交友関係を着々と築いている。準備は整った。

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