第20話レティシア 派閥の人達の意識改革に燃える
婚約候補者辞退申し入れ、魔法研究所で魔力に関するレポート作成ルーサー支援付、中等部入学と同時に飛び級する準備、ミーナとの交流等、映像とは違う結果にする為出来ることをやってきたレティシアは安心していた。
結構いい感じよね、と思い映像を書いた紙を読み直す。
すると自分と一緒に嫌がらせをする子供達がいる事に気付く。そう、派閥の子分達である。
同じ派閥の子分達からすれば、マリーへの嫉妬とレティシアの機嫌取り一石二鳥だ。レティシアに命令されて苛めた事にしたら、責任は軽く罪悪感も軽くなる。
この子供達に、マリーへの虐めをやらせないようにするにはどうすればいいのか。
考えたレティシアは思いつく。教育だわ。虐めは不利益、低い身分の相手を見下さないような意識を植え付けてしまおう。
両親に会いに来たレティシア。まずは先日の研究所での経験から話し始める。
「お父様、お母様。ルーサー様の魔法研究所は素晴らしかったですわ。
貴族だけではなく平民の方もご一緒に発明なさっているのですが、お互いに心から尊敬し高め合っているのです。」
「そうだね、私達の周りは平民が少ないが、国の魔法研究所(ルーサーのじゃないからね)と騎士団は平民も結構いるんだよ。」
「ええ、貴族も派閥関係なく優秀な方が、国の魔法研究所(国ね国)や騎士団に集まっているようですね。
所でわが領や派閥では貴族と平民は、互いにどう思っているのでしょう。
身分が低くても人柄や能力が優れていれば、尊敬と敬意ある思いで接しているのか、身分だけに拘り見下しているのか。」
少し驚いた顔をした公爵夫妻。暫く考えてからハワードが答える。
「そうだな、伯爵家、子爵家で身分で相手を判断しているものもいるな。ただ、昔に比べたらずいぶん減ったし、許容範囲内だろう。
当家や派閥の貴族達も平民の使用人はいるが、上の役職となると子爵家以上はいないな。
レティシアは、この事に関してどう思う。」
「許容範囲内ならば問題ないと思います。夫々の考えがありますし、強制しても本当に変わったかどうかは分かりません。使用人の件に関しても、マナーや安全面等考慮して自分達に近い人を上に置くのは当然ですから。
ただ、態度に出したり命令をして理不尽な事をさせていたらと危険だと思ったのです。」
「それはまずいな。婚約者候補を円満辞退したいのだから、今まで以上に目を配らなければ。
貴族と平民の関係が互いに協力し合うことが利益であると思わせる事からやってみるか。
やれることはどんどんやっていかないとな。
レティシア良い意見だった、ありがとう。」
「そうね、レティシア。私は女性達の方を担当するわ。
レティシアは初等部以下の子供たちをお願い。今は3年生以下の子供しかいないから、年齢も開きすぎていないし出来るわね。」
「はい、お母様。私、頑張ります。お任せください。
初等部、中等部は他派閥の方達もいますから。
もし不遜な意識を持つ方がいたら、出来る限り無くしてもらいたいですわ。
貴族の傲慢には、身の回りの殆どが平民達の働きと税で賄えている事を。
平民が自分達の税金と働きのおかげで貴族が暮らせてるという態度ならば、他領との交渉から領内の道路整備、高額医療費の免除、災害時の為の備蓄等、貴族が行っている事を。今までの歴史を踏まえてしっかりと教え込みます。
私が中等部で合流する時に、バレット家派閥は貴族主義の差別者集団だなんて言われたら大変ですからね。きちんとお話しませんと。フフフ・・・・・・。」
気合の入っているレティシアは両親の了解は得たとばかりに挨拶をして去っていった。
そしてすぐ戻ってくる。
「言い忘れましたが、婚約候補者教育順調です。ただカトリーナ様となかなか個人的にお話が出来ないのです。避けられているようです。
ミーナ様が第2回交流会を開催するので来ていただけると良いのですが。
私個人の勉強等も順調に進んでおります。もう少し時間短縮できないか、今先生方に計画案を作成して頂いていますので、出来上がりましたらお持ちします。」
そう言って笑うと、今度こそレティシアは去っていった。
「レティシアの気合が凄いがなんだろうな、貴族が平民に何かしたのを目撃でもしたか、候補者教育で何か聞いたのか。」
「候補者教育じゃないかしら。教えているのは王女様達を育てた方でしょう。
レティシアが、貴族と平民の問題に関して意見を言ってくるようになるなんて。
魔力量の研究といい、どんどん成長していくわね。
あの子任せてって言ってたわ。私達も大変だけれど、頑張りましょう。」
レティシアは考えた。まず子供達がどう考えているのかを知る必要がある。彼らの使用人や平民に対しての言動を調べるようにメリーナがつけてくれたメイド2人に頼む。
結果、子爵家以下の子供は平民に対して特別意識はしていないようだが、伯爵家の子息が、平民を見下している事が分かる。一家揃って同じ性格だったので、ハワードに報告し伯爵夫妻の事は任せることにした。
ハワードから伯爵夫妻の意識が変わり問題は解決したと聞いたので、レティシアは伯爵子息とお話をする。
初めレティシアの考えを馬鹿にするような態度をとったため、先に失礼な態度がどういう影響を彼ら一家に与えるのかじっくりとお話をすると彼が謝罪してきた。
そのまま、貴族と平民の関係性についてお話を進め、彼が理解できたとレティシアが納得するまでお話をした。
朝早くから、食事と時々休憩を取りながら夕方まで時間をたっぷりと使ったかいもあり、彼にも理解してもらう事が出来た。
レティシアは次に平民の子供で初等部を希望している子を調べさせる。そしてその間に子爵家以下の子供たちを集め、お話を始めた。彼らは伯爵家子息と違い、平民と距離が近い為、見下したり差別的な意識は持っていなかった。その状態を保ち時々修正すれば問題ないと判断。子供達は楽しいお茶会で終わった。
平民の子供達は、初等部入学を希望するだけあってとてもしっかりと教育の行き届いた子供ばかりだった。これなら問題ない。後はこの子供達を全員合わせて仲良くさせ良い関係を築いていく為に時々修正すればいい。
初等部で自分のいない時に貴族の権力を使い横暴な事をする子がいない様に。
レティシアは毎月1回、翌年初等部入学予定の子から初等部在学生まで全員参加の子供交流会を設けた。意見交換、街へのお出掛け、芸術鑑賞の招待等、交流会は身分関係なく友情を育て、芸術等の新たな才能を発掘する事にもなった。
これは、バレット家の派閥全体の結束力を強め、優秀な人材の発掘にも繋がった。
レティシアはミーナとカトリーナをこの会に招待。カトリーナは用事で欠席したが、出席したミーナに同様の会を進め作らせた。
年1回両方の会の子供達が集まり、親達も参加してパーティが開かれる。その年の活動報告とくじで決まったグループによる発表会等、皆で楽しむイベントになった。
マリーを虐めさせない為に始めた意識改革が、ここまで大事になるなんてと動揺することもあったが、皆楽しそうだし何だかいい感じになったからまあいいか、と思うレティシアだった。
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