第13話バレット家婚約辞退申し込み 却下される
シーナの家族を救出した翌日、バレット家では防音を施した書斎で家族会議が始まった。
「レティシア、今回の婚約者候補に関してどう思っているのか聞かせてくれ。」
「はい、お父様お母様、私は辞退したいと思っております。
当家が王太子殿下の後ろ盾になると公爵家の力の差が広がり権力のバランスが崩れかねません。国内で権力闘争が起きると情勢が不安定になり、他国に隙を見せてしまいます。」
「私達も概ね同じ意見だ。後は当家にとっても不利益になるからだな。」
「レティシア、当家が婚約候補者となっている理由と、他家の現在の立ち位置、
次期王に一番近い方がどなたなのか、そして何故不利益になるかを説明しておこう。」
「はい、お父様。(いよいよね、今後の方針が決まるわ。)」
「現在の王太子が、外見から王弟と王妃の不義の子という噂があるのは知っているな。」
「はい、目は王妃様と同じ色ですが、髪が王弟殿下と同じだからですね。」
「そうだ、王太子殿下に才能、努力、人を引き付ける力、威厳、器の大きさ、何かがあればよかったが何もない。あるのは王弟の子供という噂のみ。(外も中も残念王子だな。)
そして、第1王女は王の器と言われ、王太子以外の王族も第1王女を押している。
ただ、皆様はまだ小さい。今後何があるか分からないのに、1人にだけ支持が集中するのはよくない、これが国王と王妃と公爵家達の意見なのだ。
で、王太子の立場を上げるには、公爵家の後押しが必要だ。ちょうど3家に娘がいたのでレティシアも婚約候補者となったわけだ。」
「はい、順調に行ったならば第1王女が王になるのですね。」
「そうだ、そうなると王太子の婚約者になってしまうと、国外追放か別の領地。
犯罪者として幽閉、秘密裏に殺害。まあ良い事は何もないな。」
「そこで他の2家の立ち位置が重要になってくる。
ロレーヌ公爵家が、最有力婚約者候補だ。王太子が王にならない場合、王女は犯罪を仕立て上げるだろう。その時処刑や幽閉でなく追放で済むのがロレーヌ公爵家だ。
あの忠義者の家を処刑などしたら、他の貴族が批判と不信を持つからな。
2番手は、野心むき出しドレーブ家かな。
長男が第1王女の側近、次男が王弟殿下の家来で、息子たちは第1王女押しだ。長男も折角側近にまで上り詰めたのに、妹が婚約候補者になった事で近々次男も一緒に左遷されるそうだ。
家内で揉めるだろう、誰が勝つか分からぬが、対策は進めないとな。
子息が勝てば候補を辞退しかねない。その前にこちらが辞退しないとまずい。許可されないだろうが、一度辞退を申し込んでもいいな。
当主は娘が婚約者候補になった事で、王太子の後ろ盾になって、積極的に王にするように動いている。あれは、権力大好きだから他家に敵意むき出しだ。
今回のシーナの家族誘拐も最初はドレーブ家かと思ったよ。違ったが。
だが、これからレティシアや当家の人間全て厳重な警備が必要になるだろう。」
「分かりました、お父様。(候補辞退は映像にはなかったわね。いいわ、良い感じよ)
そういえば、誘拐事件が起こらなければお願したかったことがあるんです。
婚約者候補になったからには、護身術を習いたいとミーナ様と一緒にお願いしようと思っていたんです。
ミーナ様は騎士になりたいようですわ。
剣の稽古をしたいがご家族に反対されたと悲しそうでした。
なので、護身術を習えるようご一緒にお願いすることにしてたんです。」
「ロレーヌ家と仲良くするのはいいが、辞退に関しては聞かれるまで答えてはいけないよ。
ミーナ様は騎士になりたいのか。
なら王妃になって騎士を兼務することを奨めてみるのも面白いかもしれないな。王妃の公務は分担できるものもあるし、王妃が騎士なら王族の生存率が上がるからと。
そのことを伝えて、後はミーナ様がどの位そのために努力できるか、周囲を説得できるか、上手くミーナ様に話してみてくれ。ミーナ様のお役に立てるように。
ロレーヌ公爵には今回の件でお礼を言いに行くから、私も一緒にお願いしてあげよう。(婚約者になるのを押しまくってね)」
「ミーナ様、喜ばれますわ。(勿論です。ミーナ様とはお友達になれそうです。)
ミーナ様のお兄様は王太子の側近候補でしたよね。」
ハワードが渋い顔になった。
「あれは酷い。上辺でしか物事を判断できない。言っていい事、駄目な事の判断も出来ない。自分の立場が理解できない、我儘な小さな男の子だな。」
「以前パーティで、普通の御令嬢Bが美しい御令嬢Aにドレスに飲み物をかけられたと騒いだんだ。騎士が動こうとしていたのに、ジャン殿が来て、Aに悪い事をしたら謝罪するべきだと言ったんだ。だがAは、Bがぶつかってきたと言ったんだ。
するとBが泣出し、王太子まで出てきてAに意地の悪い事をして泣かしたのに謝罪しないなんて悪辣な令嬢だと非難したんだ。
令嬢Aの両親と周囲の貴族が不快感をあらわにし、2人に険しい視線を送っていたが気づけない。
そこに第1王女が出てきて、王太子とジャンを非難し貴族たちの不満を散らして、騎士たちに場を任せると、パートナーを元通りにしたんだ。
王女についてきていた王が、王太子に部屋へ戻るように退出を促し、
ロレーヌ公爵を呼んで息子と帰るように言って一件落着。
最後に第2王女がロレーヌ公爵にちょっと言ってたけどね。」
「ロレーヌ公爵はジャン様に後を継がせるのですか?」
「元々悩んでいたそうだ。だがその件の後から、弟に継がす為に準備を始めた。
息子は気がついてないが。前だけ見て周りに気を配る事が出来ないんだろう。
かかわりを避けることはできないから、十分に気をつけなさい。」
「明日にでも一度辞退を申込みに行く。勿論、却下されるだろう。
だが、当家が王太子を支持してないと感じる貴族も増えるだろうし、子供を使ってレティシアから聞き出そうとする者もでるだろうな。何かあったら言うんだよ。
レティシアなら上手く捌くだろうから心配してないけどね。」
「はい、大丈夫だと思いますが、何かございましたらお父様かお母様に相談します。」
「うん、後はレティシアが婚約者候補の間にどれだけ成長できるかだね。
魔法、勉強は勿論だが、それ以上の何かだね。
例えば魔道具発明とか医療や薬学で庶民も簡単に買える薬の発見とか、芸術でもいいな。
最低限中等部入学と同時に、3年次に飛び級出来るように。そちらは努力のみだから簡単だろうね。問題は、才能の方だな。」
「レティシア、好きな事、多くの人の為になること、それを高い所まで伸ばしなさい。
もし婚約者決定までに辞退出来なくても、魔法と勉強が出来ていれば留学は出来る。
他国で暮らせるように、いくつかの国に商会を作っておくか。」
「はい、お父様。魔法と勉強と護身術は成し遂げて見せます。
才能は自分ではよく分かりませんが、どうでしょう。」
「レティシア、焦っては駄目よ。
いくつかやってみて、得意なものを伸ばすことからはじめましょう。
気になったらその都度やってみたらいいの。」
「はい、お母様。ありがとうございます。」
両親達の自分に対する愛情、先を見通し何年も前から準備を進めていく様子にレティシアは安堵した。映像に出てきてないことをやっていけば未来は変わるかも。
でも、王太子とジャンがどう動くか心配ね。
不安は尽きないが、レティシアは出来ることからと自分を励まし気合を入れた。
翌日バレット公爵は婚約候補者辞退を申し込むが、王は候補者決定の前まで待つように指示、その時も辞退するつもりならば受理すると約束し署名した。
無派閥貴族達は騒然となった。
公爵3家で王太子を支持すると思い、王太子派閥に流れようとしていたが様子見に変更した。
バレット家が次期王に王太子を推してないかもしれないからと
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