第四十二話 本気


 大地も動いた。

 浮草うきぐさつかって一気に距離を詰める。

 すると――


 ぱあああああああーーん!!


 木刀が触れあったとたん、双方の剣が火花を発して粉々に砕け散った。


 二人の強すぎる闘気が強烈な磁場を引き起こし、電荷を帯びた木刀が放電して弾けたのだ。


「一旦やめ!」


 行司が試合を中断させ小者を呼んだ。

 雑役を請け負う小者が竹箒を持って台上にあがり、床板に散らばった木片を片付ける。


 その間、大地はきざはしを降りて替えの木刀を手にする。

 松浪も桟敷に陣取る真桜流関係者の枡席にいき、諏訪が差し出す木刀を受け取った。


「筆頭どの……」


 心細げな声を漏らす諏訪に松浪は厳しい語調でいった。


「心配無用。アレを遣う」


「し、しかしアレは剣王位戦のために――」


「出し惜しみしていてはこの勝負、勝てぬ!」


 諏訪の言葉を遮るようにいうと背を向け剣武台に向かう。


「……そりゃそうだけどさ」


 横で聞いていた一丸が頭の後ろで手を組んだ。


「筆頭さん、必死だよ。あんな姿、はじめてみた」


「おのれの木刀に触れさせず勝ちをおさめてきたお方じゃ。それが……」


「触れるどころか折られた……いや、砕かれた。

 でも、ぼくは楽しみだよ、ワクワクしてきた」


「なんでじゃ?」


 濃い眉をひそめて諏訪が一丸を見た。

 一丸が意地の悪い目つきになって言い放つ。


「ようやく本気をだしてくれるからさ」



   第四十三話につづく


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