第41話 レッドキャップ

 リーはそれだけ言うと鹿の解体を止めて、弓と剣を取り、素早く木の上に登った。

 大きな耳を使い、俺たちが聞き取れない音を聞き取ろうとしている。

 俺たちも武器を手に取り、何かからの襲撃に備える。

 リーが木の上から指を指した。


「お前ら、レッドキャップ五匹だ」

「二、三」


 俺はムサシマルに言った。


「四、一じゃ。無理するなと言われておろう」

「三、一、一で十分」


 リーは木の上から入れたちに言った。


「ガキが無理するな。二、二、一」

「来るぞ」


 蹄の音が聞こえてきた。


「ウラー!」


 赤い帽子をかぶって、俺の胸ほどの高さの毛むくじゃらの上半身に、下半身が二足歩行の馬。

 手には錆くれた剣を持っていた。飛び道具は無さそうだ。


 速い!


 獣道を一直線に俺たちに向かってくる。

 俺はレッドキャップとの間に木が入るように移動する。

 二匹が俺に向かってきた。どっちが弱いかよくわかってらっしゃる。


「ギュアー!」


 一匹が鹿用の罠にかかった。鹿の重さでは吊り上げられなかったが、奴らの軽さなら逆さまに釣り上げる。

 仲間が罠にかかって驚き止まったもう一匹に、ボウガンを打つ。難しい頭は狙わず、当たる確率の高い胸を狙う。


「ゴアー!」


 当たった! が胸ではなく腕だ。それも武器を持っていない方の。

 だが、ひるんだこの瞬間しかない。

 一気に距離を詰め、上段から頭を狙う。

 錆びた剣で受け止められると同時に、靴裏をレッドキャップの胸に叩き込む。

 レッドキャップは尻もちをついたところに剣を突き刺す。二度、三度。

 血が噴き出してもレッドキャップの動きがなくなるまで差し続ける。

 次は罠にかかったレッドキャップだ!

 しかし俺がレッドキャップを見ると頭に矢が三本刺さっていた。

 

 リーか?


「プラントコントロール! トレント」


 俺はムサシマルの援護に向かうと木が枝を振り回していた。

 ちょっと、俺たちにも当たるぞ!

 一応、レッドキャップを狙っているようだが、振りが大きいため下手に近づくと俺もリーの魔法の巻き添えを食いかねない。


「ウラー! ……ギャン!」


 小回りが効かないのか、俺に突進しようとしていたレッドキャップの一匹に枝がクリーンヒットし、赤黒い帽子を吹き飛ばした。

 レッドキャップが目を回しているところを、俺は真っ直ぐに首めがけて自分の体ごと体当たりのように剣を突き刺す。

 口から血の泡を吹き、目を見開いたまま、何度か呻き声をあげ絶命した。

 あたりを見回すと二匹の首を落とされたレッドキャップの近くで剣の血糊を落としているムサシマルが居た。

 周りに増援がいないか確認してから、リーは木を降りてきた。


「思ったよりやるな。ニイちゃん達」

「ああ、そうだろう。俺が言った通り、俺たち各々二匹、お前が一匹だったろう」

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