第10話 オークとの戦い

 女性の叫び声と同時にオークの動きが鈍くなる。

 続けざまに別の女性の叫びが聞こえる。


「ファイアアロー!」

「エアースラッシュ!」


 炎の矢が数本オークの胸に突き刺さり燃え上がる。

 見えない刃が斧を持っている太い腕を切り落とした。


 ムサシマルがオークに向かって走り出した。

 俺もそれに続いて走り出す。

 子熊はオークから逃げて森の奥に消えて行ったのが視界の片隅に映る。

 ちょうど逆方向から四人の女性がオークに向かって行くのが見えた。

 見覚えのある金髪と赤毛。レイティアとリタ!?


「ファイアアロー!」


 槍を片手にオークと距離を詰めながらリタが再度、炎の矢を放ち豚面が燃え上がる。

 流石のオークも怯んだようだ。

 その隙にムサシマルがオークにすれ違いざま横腹を切る。


「ムサシマル! なんで?」


 リタがもう一人の女性とオークに対峙しながら、叫んだ。

 レイティアは最後の一人の女性と少し離れた所で警戒をしていた。


 勢いで、飛び出してしまった俺はどうする?


 オークが落とした斧が目に入る。

 行けるか?

 ムサシマルを含む三人がオークと戦闘を繰り広げている側に落ちている斧へ一直線に走る。

 斧を掴んだが……。


 重い!


 何とか持ち上げられたが、オークから離れなければ……。


「キヨ!」


 ムサシマルの声に振り向くとオークが目の前に迫って来た。

 まだ無事な左手が俺に向かって伸ばされている。


 捕まれば『死』

 相手の動きは遅い。逃げろ!


 体が重い! 足が動かない! 動け!

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