第7話 午前零時のバー


沖縄県の

とあるはずれに

実在するバーでの

出来事


午前零時

バーがオープンして六時間


バーに怪しいエロスが

漂っている時間帯


口説き損ねて

まだ諦められない

若い男が

必死に女性に

食い下がっている

二十代のカップル


ひとり身の

男性・女性が

お互いの存在を意識して

互いに耳を

ピンと傾けている

静かな攻防


なぜかこの時間に

再び

泥まみれの作業服の方


様々な人間の欲望が

一番色濃く匂い立つ

時間帯


ある日

この時間帯に

こんな出来事が


関東のとある県から

移住して三年目の

四十代と思しき常連のご夫婦


旦那さんがベロベロに潰れ

カウンターを枕に寝始めると

奥さまは

ひとりで飲んでいる男性客を

次々と物色


手を首に巻きつけて

身体を寄せ

耳元で囁いている


ねぇ、キスしようよ


男性客は当然ビックリする

目の前にはその女性の

旦那さんがいるのだから


二人の男性客にあしらわれ

いよいよ

ぼくの席にやってきた


ねぇ、キスしたい


ぼくの時は

二人の失敗で

欲求がパンパンに

膨らんでいたせいか


言い終わる間もなく

頬をくっっけて来た


おおっと

旦那さんがいる前で

ぼくにはそういう事は

出来ないので

勘弁してください・・・


彼女は

パッと頬を離し

ニヤッと

不敵な笑みを浮かべ

軽くぼくの頬をたたいた


次にわたしが

ひとりで来た時には

逃がさないからね(笑)



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