とあるバー

きよじろう

第1話 午後六時のバー


沖縄県の

とあるはずれに

実在するバーでの

出来事


午後六時

いつものようにバーがオープンする


開店と同度に訪れるのは

ほぼ常連さん


イタリアンを食べに行く前に

食前酒を軽く一杯

というようなカップルや


孤独な時間を紛らわす為にやってくる

一人客が多い


次の行先・未来がある

カップルや人達は


小一時間程度で

希望に満ちた笑顔と空気感を身にまとい

颯爽とバーを後にする


孤独を埋めに来た客は

しばらくバーで沈殿している


ぼくの指定席である

入り口入ってすぐの

カウンターの端の反対側の端に

いつも佇んでいる年配の女性がいる


グラスを傾けている時には

陰鬱な寂しげな表情だが

注文の時や時折話し掛けてくる

バーテンダーさんとの会話が

始まった瞬間

満面の笑みに変わる


ほぼ毎日

彼女はその一瞬の為に

希望を求めて

バーにやってくる


瞬きする位の時間の為だけに


まるで

掴めない雲を掴もうと

するかのように

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