恐怖2(石井視点)

「……はぁ。 アイツ相変わらず何を考えて動いているのか分からないから扱いにくいのよね」


 軽く頭に手を当てボヤく白髪の女性は、溜息まじりに天王寺さんに対しての不満を口にした。 そんな彼女に血を流しながら体を引きずり近づく山口先輩が話しかける。


「あの、助けていただき、ありがとうございました。 私と石井では多分死んでいたと思います。 本当に、何とお礼を言えばよいのか」


「……私達が、あなた達を助けられたのはたまたまですのでお礼の言葉は結構ですよ。 それより2人とも怪我をされていますね、治癒魔術かけましょう体を見せてください」


 山口先輩も私も怪我と一言で表現するには、あまりにも悲惨な状態なのだが、そんな状態を見て目の前の女性は軽く治そうかと提案してくる。


「自分で言うのもなんですが、かなり損傷は激しいと思います……できるのでしょうか?」


「問題なく、少しだけ触れますよ」


 山口先輩の痛々しい傷に軽く触れる。 すると淡い光が包み込み、腕や足の意味をほとんどなさなくなった部位が、ものの数十秒で完全に治癒した。


「これは、凄いですね」


 無詠唱で瞬時に体を回復させるこの人は何者だろうか。 疑問に思っている間に、白髪の女性が今度は私の前までやってきた。


「石井さんも傷ついてますね、少し触れますよ」


 同じ要領で私の体も数十秒程度で完治させる。


「ありが…とう……ございます」


「いえいえ、この程度大したことではありませんよ。 それよりも、どうです? 再び戦えそうですか?」


「は…い。 何から…何まで…あり…がとうご……ざいます。 今度…は、少しは……善戦で…きるよう…に頑張ります」


 私の言葉に満足そうにうなずくと、今度は班長である山口先輩に話しかける。 それに対して私と同じようにお礼と戦える意思を伝える山口先輩。


「それでは他の前線も崩壊しかけていますので私はこれで……それと、今回は間一髪間に合いましたが、次も私たちが来れるとは限りません。 場合によっては撤退することも頭に入れて前線を守ってください」


「分かりました、お気を付けください」


 白髪の女性は、山口先輩の言葉にニコリと笑顔で返すと、消えたという表現が正しいだろう、その場から瞬時に姿を消した。

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