恐怖3(石井視点)
白髪の女性が、忽然と消えた空間を眺めて、山口先輩は口を開く。
「あの人、何者だったのかしら。 無詠唱で治癒の魔術を使うなんて、少なくとも私達と同じ学生ではないわよね。 成人した冒険者かしら?」
「分かり……ません。 で…すが…最初にゴーレ……ムから…私たちを…守ってく…れた人……なら知って…います」
その言葉に山口先輩は反応した。
「ゴーレムの大軍を相手に一歩も引かなかった…というか楽しんでいるようにしか見えなかった人の事よね? 彼女は何者なの?」
「ゴーレ…ムを……倒し…た人は。 私を…イジ……メていた…グループの…リーダーで…す」
「へぇ………えっ? イジメ? 何でイジメっ子が助けに来たのかしら?」
「分か…りませ…ん」
私の答えが予想外だったのか、珍しくオーバーリアクションをとって首をひねる山口先輩。 このことに関しては私も分からないので一緒に首をひねった。
「石井の言う、イジメっ子って笑顔でゴーレムを破壊していた人だろ? 本当に変わった人だよな必死に戦ってる私なんかは目もくれないでゴーレムだけ破壊してどっかへ行っちゃうんだもん」
急に第三者の声がして2人して振り返る。 すると服はボロボロだが私達と同じように治癒されたのか無傷で立っている荒川先輩がいた。
「荒川先……輩!?」
「ははっ、驚いたか石井? 2人して話していたからこっそり回り込んでおいたのさ。 ……といっても、山口先輩は驚かなかったみたいですけどね」
「いえ十分驚いたわよ荒川後輩、戦場で私達を驚かそうなんて、くだらないことをするという点においてだけれど」
「ヒドッ!! もっとこう頑張ってた後輩にかける言葉があるでしょ?」
「無いわね」
「合わせて酷いッ!!」
山口先輩からジト目を向けられて抗議する荒川先輩。 その行為に対して、山口先輩はバッサリと斬り捨てる。
「さて冗談はこれくらいにしましょう。 さっきの白髪の人も言っていたけれど次に助けが来るとは限らないわ。 気を引き締めて……特に荒川」
「何で名指し!?」
荒川先輩は少し不満そうだったが、先輩二人のこのやり取りのおかげで、自然と私は笑顔を浮かべた。
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