裏切りは突然にー3
「危なっ!!」
足音や呼吸、何かがわずかに聞こえたためにコレで何度目かの回避に成功する。
「何で当たらないのよ!!」
姿は見えないが動揺した声が部屋中に響く。
「なあ、イレーザ。 もう止めにしないか? 今なら俺も無傷だし、黙っておくぞ。 それにお前はドワーフの大使だろ? こんな事をして許されると思っているのか?」
「うるさい!! 黙りなさい!!」
再び斬りかかってきた、イレーザの攻撃を見えないながら回避する。 それから何度もイレーザは斬りかかるが、時間が経ちヒートアップするにつれて、攻撃が雑になって姿は見えないがその他の情報が露出した状態になる。 当然最初の頃より回避する難易度は落ちるためもはや姿が見えなくても攻撃を回避することは容易となった。
「なあイレーザ、いい加減あきらめろ」
攻撃が始まってから何度目かになる説得でようやくイレーザは観念したのか、姿を現した。
「私は……このままでは、デュノア様が……」
「とりあえず、何があったのか教えてもらっていいか?」
俯いてブツブツと独り言を呟くイレーザはもう戦闘意欲が無いと判断して近づくが、どうやらそれは間違いだったらしい。 顔を上げたイレーザの目には未だ殺気に満ちていた。
マズイと思い慌てて距離をとったが、指先がほんの少し斬られる。
「危なかった、完全に油断した」
冷や汗を流してイレーザから距離をとるが、何故だかイレーザは追撃をしてこない。
「菊池、本当にごめんなさい。 だが、こうしないと私たちの国がメチャメチャになるんだ許して」
言葉を発したイレーザの表情は先ほどまでの殺気にまみれた瞳はしていなかった。 何故急に? と思うと同時に、斬られたヶ所からの異変に気が付く。
「何だコレ!? 魔力が暴走している?」
指先から、血液が勢いよく噴出しだす。 そして斬られた個所からゆっくりと雑巾を絞るように手がねじれ、骨が軋みを上げた。
「おい、イレーザお前いったい何をした!?」
声を出して聞いたが、既にイレーザの姿はそこにはなかった。 おそらく目的は達したということで姿をくらませたのだろう。
「最初から少し傷をつけるだけで良かったってことか、完全に油断した。 ヤバイマジでどうしよう」
見ると既に肘まで手がネジリにネジレている。 出血量も半端なく気を抜いたら意識が持っていかれそうだ。 しかし、特にこれといった対処法も思いつかずネジリが肩まで来た時点で俺は血液を失いすぎたのか、いつの間にか気を失った。
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