一夜の過ち?
「………懐かしい夢を見たわね」
重い瞼を開け体を起こす。 幼い頃の夢にどこか懐かしさを覚えつつ肌寒さから身震いする。
あれ? 何故私は裸なの? 悪魔の様な酒をあの男と飲み干せたところまでは記憶があるのだが、どうもそれ以降の記憶が不鮮明だ。
「まあ、アレだけ強い酒を飲み干したのだし、悪酔いしたのでしょうね」
認めたくはないが記憶が飛んでいるので酒に飲まれてしまったのだろう。
「まあいいわ。何とか飲み干せたのだから余計な事を考えるのは止めましょ……えっ?」
「…どうも」
何故だか分からないが隣には昨日の男が横になっていた……裸で。
「ちょっと、アナタ何してるの!!」
「言いたいことは分かる。 だが、ちょっと待って、落ち付いて」
「この状況で落ち着ける訳ないでしょう!!」
「分かる。 分かるがマジで落ち着いてくれ!! 何もしてねぇから!! マジで!!」
「……本当に何もしてないんでしょうね」
「神に誓って何もしてない」
「じゃあ何で私もあなたも裸で一緒のベッドに入っているのかしら」
「酒を飲んだ後覚えてるか?」
「正直、全く何も覚えてないわ」
「あの悪魔の酒を飲み干して俺もお前も気を失ったらしいんだが、俺は昔から酒の抜ける速度だけは早くてな。 数時間後には完全に酒が抜けたんだ」
「あの酒を飲んだ後だし二日酔いに効く薬を処方してもらってアンタに届けようと思ったんだ。 もちろん女性の部屋だし付き人にでも持って行かせようとしたさ。
だがパーティーの片づけなどで周囲はせわしなくてな、薬を届けるだけだし俺だけでもいいと思って部屋を訪ねたんだ」
「それで何で、私とアナタは裸でベッドにいる事に繋がるのよ」
「まあ話は最後まで聞けって、ドアをノックして返事があったから入ったら、アナタにいきなり押し倒された」
「……はぃ?」
「デュノア様って何回も連呼してたから多分誰かと間違えたんじゃねぇのか? 凄い力で服をはぎ取られてベッドに叩きつけられたぞ」
確かに、デュノア様の夢は見たけど、まさか私がそんな、はしたないマネを? いや…、しかし……。 今の状況のせいで頭の中がグルグルと良くないことを考えてしまう。 それをどうとらえたのか菊池は言葉を発した。
「安心しろホントに何もねぇよ。 俺も抵抗したし、ようやく落ち着いたと思ったらアンタがイキナリ意識を取り戻して今の状況だ。 まあ、気まずさはあるけど。 本当にそれだけだ」
「……全部を信じるわけではないですが。 私が酒に酔ったら手が付けられないというのは心当たりがあります。 ……本当に私が?」
「……まあ、なんだ。 俺もアナタも今回は酒のせいという事で水に流すのがいいと思う」
そういって菊池は服を着ると、ドアを開けて素早く出て行った。 1人部屋に取り残された私はこの感情を抱え込み頭を抱え1人でいつまでも悶えていた。
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