テスト明けー2
椎名に教えてもらったような気がするので記憶を探りこの現象についての言葉を探る。
「四季……だったっけ?」
「はい、夏が一番暑く、冬が一番寒いですね、春と秋は徐々に暑くなるか、寒くなるかの違いで一番過ごしやすい時期です」
「夏は今だったっけ? これ以上は流石に暑くはならないよな?」
最近では何もしていないにもかかわらず、肌着が汗で張り付いて非常に気持ちが悪いため、ただでさえ参っているのだ。 これ以上があるとは考えたくもないが、椎名の返答は残酷なものだった。
「いえ、まだ夏になったばかりですし、コレからもっと暑くなりますよ」
「マジで?」
「マジでですね」
その言葉を聞いて軽く絶望を覚える。 これ以上暑くなるとか意味が分からない、勘弁してくれ……と心の片隅で思いつつ、会話が完全にすり替わった事に安堵して、目の前のテスト用紙をカバンの中に押し込めた。
「菊池さんダメですよ、 分からないところはキチンと理解しておかないと後々に後悔してしまいます」
―――が、 この行為を何故だか椎名が咎めてきた。 その一言で再び石井ちゃんの纏っている空気が凍り付いたのは間違いではないだろう。
「いや、 分かってるけど…何処が分からないのかが分からないというか、何処から手を付けるべきなのか」
フォローしてくれてたと思っていた椎名のいきなりの裏切りに対して思わず、しどろもどろに返答を返す。 もしかして椎名は素で季節の話題に乗っかってきていたのだろうか?
そんな俺の様子を真っすぐに見つめて今度は石井ちゃんが口を開く。
「大丈夫…です。 私が……きちんと教え…ます、 今度は…菊池さんに……恥ずかしい点数なんて……取らせません」
石井ちゃんから並々ならぬ気迫を感じた。
「いや、 協力してくれるのはとても嬉しいんだが――――」
もう一度机の上にテスト用紙を出す。 そこには、先ほどから変わらない、絶望しか感じられないような数字が並んでいる。
「――――あれだけ勉強して、 流石にこの点数はこたえる」
「頑張って……教えます。 次に…いい点を……取りましょう」
「その通りです。 今回はダメでも次回があります。 次に繋げればいいだけですよ菊池さん」
二人ともえらく前向きだな、ここは二人の期待に応えて気合を入れて勉強すると言いたいところだが、いまいち気持ちが付いていかないのは、仕方がない事だろう。
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