後悔
「どうでした? 原因は分かりましたか?」
「……ああ」
気分が悪い……アレはイジメなのか? あの光景はイジメなんて生易しい言葉ではなくリンチや暴行が正しい表現だ。 そして何よりムカつくのは朝の俺の対応だ、今朝の俺は何と言った。
(……石井ちゃんは相談してこないし、とりあえずは現状を維持しよう、様子を見て判断するよ)
何と思っていた。
(助けも求められないような腑抜けを助ける気は今のところは無い)
あんなにも暴力を受けていたにも関わらず俺が同じような目に合わないように必死に頼み込んでいる少女が腑抜けだと!? 今朝の俺は頭がどうにかしてたんじゃないか?
あの光景が頭から離れずに、後悔の念が胸の中でグルグルと渦巻く。
「あれ? 石井のやつ治ってるじゃん」
唐突にその場に似つかわしくない明るい声が響いた。
「ホントだ、あれだけ痛めつけたのに癒しの魔術スゲーな」
ワザとらしく大声を上げて群がってくる。 その声は少し前までは何とも思わなかったのだが、あの映像を見た後だと、とてつもない不快感が全身を駆けめぐる。
アイツ等はあの映像を見終わってからスグに表れた、石井ちゃんのようになりたくなければ大人しく軍門に下れとか、そういった遠回しの脅しだろう。 アレを見せることでより簡単に脅しが効くだろうと踏んだバカみたいな短絡的思考、吐き気がする。
「あれー、そこにいるのは菊池さんじゃないですかぁ? どうしたんですぅ? 夜に外出していると私達みたいな、悪い人たちに絡まれちゃいますよぉ?」
不良の中の一人が、大声を上げながら近づいてくる。
「石井ちゃんが身に着けていた魔道具を見た……お前らが暴力を振るったのか」
「そうだよー、何か文句でもあるわけ」
不良達が反省の色もなくケラケラと笑いながら答える。
「だいたいさ菊池、アンタがムカつくのよ、私たちの玩具をとって何様のつもり
なの?」
「………はっ?」
こいつら本当に腐ってやがる。 椎名が言うには、殺人は適当に処理されるらしいから、もういっそのことコイツ等を殺してしまおうか。
「それでさぁ私たちは思ったの、いっそ二人ともおもちゃにしてしまえばいいんじゃないかってね」
先ほどの映像で見覚えのある顔が次々と周囲を固め逃げ場をなくす。
「菊池さん、下がってください私がまとめて片づけます」
俺をかばうような形で一歩前へ踏み出す椎名を片手で制する。
「必要ない」
「……菊池さん」
イライラしすぎて考えがまとまらない。 とにかく今は目の前の馬鹿共を殴り飛ばしたい。
一歩踏み出し、鋭い視線を椎名に向けた。
「俺がやる。下がれ」
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