朝ー6

「そういえば、菊池さんが勉強を教わっている石井さんですが、やはり学校ではイジメを受けているみたいです」


 食事が終わり、俺が食器を片づけている最中に椎名が唐突に話してきた。


「ずいぶん調べるのが早かったな、イジメの原因は?」


「勉強が出来ることによる嫉妬が大半です、あとは周囲の人達がやっているから、なんとなくムカつくから、など学生ならではのフワッとした理由が多かったですね」


「そうか……」


 まあ、どの世界でもイジメの原因なんてそんなもんだろう。 むしろ、明確な理由が存在する方が珍しい。


「それで、どうしますか?イジメている主犯格は分かってますが潰しますか?」


 椎名が少しだけ真剣な表情で聞いてきた。 これに俺は何と答えるべきだろうか少し考える。


「……石井ちゃんは相談してこないし、とりあえずは現状を維持しよう、様子を見て判断するよ」


 イジメを受けているにも関わらず彼女は何も言ってこない。 助けも求められないような腑抜けを助ける気は今のところは無いが、彼女には勉強を教えてもらっている恩もある。 もしも助けを求めて来たときは全力で対処しよう。


「分かりました、ではこのまま放置しておきます」


「話しているところ悪いけれど、二人とも早く出ないと遅刻するんじゃない?」


「えっ!!」


 木乃美さんの言葉で、慌てて振り返り時計を確認する、時間にはまだまだ余裕があった。


「ビックリさせないでくださいよ、ぜんぜん間に合う時間じゃないですか」


「そっちの時計は昨日から壊れてるのよ、正しい時刻はコレ」


 そう言って木乃美さんが見せてくれた腕時計の針はシャレにならない時刻を刻んでいた。


「ヤバッ!!走るぞ椎名!!」


「了解しました」


「いってらっしゃい」


 俺は話を打ち切って学校へと全速力で駆けていった。

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