藤本真和の執着

夏目八尋

序章 台風17号


 列島を縦断した台風17号による被害は甚大で、農作物への打撃に始まり河川の増水、一部浸水、さらには停電や火災など、多くの爪痕を残した。

 のちに行われた政府主導の聞き取り調査でも、多くの被災者達から被害に関する生々しい声が集められ、誰しもが自然の恐ろしさを再確認する出来事となった。


 日常に突如として襲い掛かってきた大災厄に、調査員からの問いに答える被災者の一人であるこの男性も、どこか気の抜けた、脱力した様子で、静かに、淡々と、口を開く。


「気づいた時には、もう手遅れでした」


 と。

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