何だこれ社会学?

赤地 鎌

第1話 社会学とは?

 社会学とは?


 登場人物

 社会学研究者、窓辺 ケイ…35歳、男性。

 窓辺 ケイの助手、見方 カオリ…24歳、女性。



 カオリ。

「こんにちは、ようこそ、窓際族の社会学へ!」

 

 ケイ

「窓際族なんかじゃあない!」


 カオリ

「あら、ケイ教授…今日も窓から外を覗いて溜息なんて…さすが、役に立たない社会学の学者ですね!」


 ケイ

「カオリ君、そんな役に立たない社会学の学者の助手を君はしているんだよね…。その言い方だと、君も役に立たない人物になってしまうよ


 カオリ

「わたしは、かわいいから、世の中の役に立っているんです。だから、適当に社会学っていうマスコミで、どんな言い訳にも使える学問をならって、某テレビの空気が読めない学者のように、偉そうな事を言ってお金を稼ぎたいんです!」

 

 キラン、笑顔のカオリ。


 ケイは頭を抱え

「あの…まあ、確かにマスコミには…そういう社会学の研究者もいるけど、大半の研究者は、真面目に社会学を究めようと頑張っているんだから…。それに、社会学を修めても、金持ちにはなれないよ」


「えええええええ!」

 がーーーーん

 カオリが荷物を纏めて

「じゃあ、辞めます。お元気で…」


 ケイは手を振り

「はいはい、今までありがとうね」


 カオリは纏めた荷物をケイに投げ

「そこは、止めるべきでしょうーーーー」


「ぎやああああああ! なんでツンデレ!」

 ケイは荷物と共に転がってしまう。


 カオリは肩をほぐして

「茶番はここまでにして、どうして社会学って誕生したんですか?」


 荷物の山を払いのけケイが額を擦り

「社会学とは、古代から端を発しています。ヨーロッパでは有名な人物として古代ギリシャのプラトンや、東洋では孔子といった人物まで、古くから人は人々が暮らす社会、世の中について研究をしているのです。それが近年の国家や、会社、組織を作る上での基礎にもなっているのです」


 キラリと笑み、カオルは

「成る程、古典芸能なんですね」


 ケイは

「いや、踊ったりしないから…」


 カオルが

「じゃあ、社会学がどうして会社や、組織、国家まで造る基礎になっているんですか?」


 ケイは

「人は、人と暮らす時に、様々なルールを作ります。その様々なルールが出来上がると、どうしてもルールを維持する上で、様々な役割が誕生してきます」


 カオルが明るく

「格差社会ですね!」


 ケイは肯き

「その通りです」


 カオルは退いて

「ええ…冗談で言ったんですけど…」


 ケイは複雑な顔をして

「我々、社会学を研究する上で、どうしても格差、差別、偏見は回避できない事です。だからこそ、どうして、そのようなマイナスが生まれるのか? それを知る為にも社会学という学問が誕生したとも言えます」


 カオリが指を立て指摘し

「じゃあ、貧乏人は永遠に貧乏で、金持ちは永遠に金持ちなのが、世の中の真理なんですか?」


 ケイは複雑な顔で

「それが極端に行き過ぎると、どんな社会でも崩壊してしまいますね。嘗てのローマ帝国が栄えた時には、各階級の変化がスムーズで柔軟だったから発展したと言えますが、それを固定化した瞬間、ローマ帝国は滅びました。日本でも、それが行き過ぎた例として明治時代の初期に、エタ、非人といった最低階級があり、それが明治政府によって消えましたが…。それを差別していた市民が、エタと非人だった人達を虐殺する…なんて痛ましい事件もありました」

 ケイは遠くを見るように

「優生保護法やら、男尊女卑、宗主国と属国。人類の歴史を調べれば、キリが無いほどに人類は、差別や偏見、格差の歴史塗れなのです」


 カオリは挙手して

「はいはい! じゃあ、教授は、そういう事を無くしたいと、思っているんですよね」


 ケイは悲しげに笑み

「一個の学問で、それが解決したら、世界は昔から平和だったでしょう。ですが…間違った使い方をされるのが世の常なのです。だからこそ、皆さんも一つの考えに傾倒するのではなく、色んな考えに触れて、色んな視点を持つ事が必要なのです。その為に、社会学は、色んな分野が誕生して、様々な社会学が研究されているのです。世の中を知るには、一つの事に集中するより、色んな事を知る事が大切なのです」


 カオリが

「はい、すごく格好いい、まとめ方をしていますが。ずばり、世の中の役に立っているの? 立っていないの? それが聞きたいでーす」


 ケイは胸を張り

「我々の社会学は、色んな政治や独裁者の道具にされてきました。ですが、それを反省して、我々は様々な情報や、実証実験をして、さらに他分野の心理学や、経済学、数学、物理学に至るまで、協力を得て、自らの研究を行っています。まだまだ、未熟な分野ではありますが…。何時か…世の中を良くする道具として使って頂けるよう、日々切磋琢磨しております。どうか…皆様のご支援をよろしくお願いします」


 カオリが笑顔で

「つまり、社会学の本を買えってステマですね!」


 ケイは苦い顔で

「せっかく、良い感じでまとめたのに…」


 カオリは

「という事で、難しい単語や、数式なんか、無視して、分かり易く解説したいと思いますので、よろしくです!」


 ケイは微笑み

「一冊、そういう本を買ってみるのも悪くはありませんよ」


 カオリは遠くを見て

「でも、社会学や、経済学を修めても…金持ちになれないなんて…。とんだ貧乏学問ですよね」

 ケイも同じく遠くを見て

「いや、金持ちになる学問があったら…私も習いたいですよ」


 カオリから

”世の中に不平不満を感じたら社会学へ”

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