衆愚で醜愚な植物
こちらのパフォーマンスは最悪と言って良い。
新型H.T.の能力で底上げを行っているものの、先程の地下での移動で消耗している。魔力的な問題だけでなく純粋に無茶な動きを原因とした足の痛みの所為で動きが悪い。普段も長期戦に向いていないシェリー君だが、今回は何時も以上に時間経過が致命傷になる。
そこで短期決戦に持ち込みたい所だが、ここで更に問題が起きている。
あれは植物の根だ。少々……非常に堅牢で破壊は難しいが工夫すれば端から切除していく事が不可能な訳ではない。
で、どうする?
今やっているのは植物を労わり慈しみ育むガーデニングではない。
植物が明確な殺意をこちらに向けている以上、殺人の領域だ。根を傷付けてはいけない云々水やりをし過ぎては云々肥料土壌云々というおめでたい要素は何処にも無い。逆に瞬時に枯らして
根を端から切除して枯らすまでにどれ程時間を掛ける気だ?その前にシェリー君の方がガス欠を起こす。肉体の限界が来てこの衆愚ならぬ醜愚な植物が全身を串刺しにして肥料になる未来はもう目の前だ。
その未来を潰す為には根を即時に潰し、根を辿って大元を叩き潰す必要がある。
だがしかし、最悪は重なっている。
これは振動に対して反射的に襲い掛かってきていない。先程言った様にこれは『心臓や肺、手足に頭と致命的な箇所を的確に、そして執拗に狙ってくる。』
先程からシェリー君は根の襲撃相手に絶えず動き回り、背面に回ろうとする根の動きを牽制して、全てを視覚に入れる様に、包囲されぬ様に位置取りを行い、その強引な位置取りの結果シェリー君を貫かんと襲ってきた根は回避、捌き切れない根の襲撃は新型H.T.を用いて受け流す様に立ち回っている。
包囲を意図した動きに対する対策。シェリー君が最も得意とする
しかしそれが一瞬止まり、次の瞬間には先程まで包囲戦を狙っていた根が一つの塊となってシェリー君を上から叩き潰そうとし始めたのだ。
塊になった段階で警戒していたシェリー君はこれを回避。寸前までシェリー君の居た地面が振動と音を伴って円形に凹む。
当たっていない事を認識し、その後何度も何度も、大槌の様に根の塊をシェリー君目掛けて振り下ろし、薙ぎ、振り上げる。
かと思えば振り下ろされた塊が地面を穿つ寸前に解け、一本一本が鞭の様にしなり、打ち据えんと襲い掛かってくる。
あぁ、そうだとも。数分の内にこの根は戦い方が幾度も変わっているのだ。
お陰でシェリー君は消耗しながら有効打を練り、そして戦い方の変化故に有効打を破棄し、再度有効打を練り、破棄し……これを繰り返している。
大元を辿るどころの騒ぎではない。
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