ハイテク魔道具講習
『光センサー』
外枠の箱の半分以下の大きさの小さな立方体で、表面は黒く、青い幾何学模様が走っている。
これ自体に動力源と光信号の受け取り、それにある程度の解析が出来る機能が備わっている、つまりこれ自体が既に完成した魔道具としての体を成している。
設計の骨子は詳らかにされているが、これは積み木で出来た城の基礎部分の一部をそっくり別の積み木に差し替える様なもので、下手をすれば総崩れになりかねない。
複雑な機構の根幹を弄って使える様に微調整を行うという動作が厄介で骨の折れる事に変わりはない。
「この森をこの魔道具で網羅するのは無理だと思った?残念、自称そこそこ天才の自称そこそこ天才たる所以はその辺も想定して発明を作っている所にある!
という事で今回紹介する魔道具はこちら。」
そう言ってセンサーを取り出し、床下から現れた黒光りする金属の塊群へと近付いて行った。相も変わらず脈打つ様に振動している。
「これは私が作った魔道具作りをする上で想定される使用環境のシミュレーションを行う装置だ。」
そう言いながら装置に触れる。すると触れた箇所に空洞が出来、迷いなくセンサーをその中に入れた。
「例えば……砂漠地帯だと仮定すると……」
金属表面にタイプライターもどきが現れ、映写機も無いのに空中に映像が浮かび上がる。
そこには幾つかの単語と数字が並んでいた。
「これは……」
「ふむ……」
映写機の類が見当たらない上にスクリーンも見当たらない。
映像として見えているものの、影が無い。魔法の一種か……。
「空気中の水分に干渉して光を意図的に屈折させて任意のものを視覚情報として空気中に出力する、『幻燈』の一種だ。
現在は装置が5㎏もあり、大して複雑なものを映し出す事は出来ないが、この手の装置を操作する上で絶えず変化する数字を1/10秒単位で提示してくれるから中々重宝している。」
饒舌だがそれ以上に手がよく動く。タイプライターもどきが天才の指先の動きに応えてカタカタと小気味良い音を立てる。
「少しばかりアラームが鳴るから気を付けて欲しい。」
そう言ってタイプを終えると同時に、空中の画面が赤く激しく点滅した。
『センサー01が異常を検知しました』
『センサー01が異常を検知しました』
『センサー01が異常を検知しました』
『センサー01が異常を検知しました』
人の不安を煽る大きな警報音とカタコトの声が鳴り響き、鼓膜を震わせる。
「信号停止っと……」
そう言いながらまたもタイプライターを操作すると、画面の点滅と警報音はピタリと止んだ。
「設置する場所付近の環境を幾つかシミュレーションしておく。
フィルターが出来たらここにセンサーをセットして動作確認。という具合でやっていく事にする。
操作方法を教えるから、見ておいて欲しい。」
ハイテクノロジー魔道具の講習が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます