退屈を殺しにやってきた

 予想はしていたが、あまりにもやる事が無い。無さ過ぎる。

 今、この家に居るのは村長と俺だけ。そして、村長は未だ眠っている。

 この村に娯楽という娯楽は無い。以前は村の宿に幾つか来客用のボードゲームや遊具があった。しかしそれらはクアットが以前燃やしてもう無い。何より、この場にあった所で一人では遊べやしない。

 かと言って、眠りこけていたら確実にクアットが後々面倒だ。

 あの女が来るか、オーイが戻ってくるか、それが終わるまでここでずっと何もせずに居るしかない。

 暇だな。クアット辺りと一緒に居たら、面倒な事をやらされる。それはそれで面倒だ。だからこちらに来るのは正解だと思っていたが、ここはここで面倒が無さ過ぎる。

 一刻も早くどちらかに来て欲しい。


 そんな願いは、もしかしたら聞き届けられたのかもしれない。

 「ただいまー。」

 気の抜けた声が家の外から聞こえた、解放の合図だった。

 「いやぁ、お腹減ったぁ……ってあれ?トーレーどうしてここに居るの?」

 そう言って家に入ってきたのはあの女じゃなく、オーイの方だった。

 「…………(無言のまま眠る村長の方を見てオーイにアイコンタクト)」

 「あ、あぁーハイハイ、爺ちゃんの看病してくれてたんだ。ありがとうトーレー。ゴメンね。何か気を遣わせて、変わるから大丈夫だよ。」

 そう言って家に入ってくるオーイ。その表情は明らかに動揺している人間のそれ・・だった。

 手には何も持っていない。懐に何かを隠している様子も無い。オーイは早朝からこの時間まで、一体何処で何をしていた?

 「…………(顔に向けていた目線を上から下へと動かして首を斜めに傾げて『何をしていた?』というアイコンタクト)」

 「えっと、私の顔に何か付いてる?そそそそ…そんな訳、無いよね?」

 動揺が更に激しくなっている。目線は動き回り、しかしこちらにだけは決して目を合わせないようにしている。

 手足を遊ばせる様に動かし、傍から見て奇妙としか言いようがない。

 「…………(無言でただ凝視し続けている)」

 「ひゅ、ひゅーひゅー、ふひゅー、ふひー(目線を斜め上に、何もない天井を見ながら口笛を吹こうとしている。が、音は鳴っていない)」

 オーイは別に嫌いじゃない。

 ウノの様に頭の悪い猪突猛進という訳でもなく、ドーエルの様に意思疎通をしようとする意志が無い訳でもなく、クアットの様にまともさがなくなっている訳でもない。

 少し面倒くさがりだが、比較的村の若いヤツの中ではまだ良い方・・・・・……だと思っている。思っていた。

 ここまで馬鹿だとは思っていなかった。

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