何をって、そりゃぁこの辺の毒キノコを採取して解毒剤作りを全自動で始めただけだが?


 「フム、フム……ふむ、ん?」

 ここで自称そこそこ天才が首を傾げた。

 「ちょっと良いかな?『今度起きる中毒事件が起こると知っていながら放ってしまったら』と今言ったが、またそんなロクでもない事が起こるのかい?」

 「確証はありません。ただ、その可能性が高いと、私は思っています。

 そして、それが起きれば、今度は本当に、村の方々の生命に危機が……」

 シャワー、暖かい部屋、温かいパスタを食べてと血色が戻っていたシェリー君の顔色がまたしても曇る。

 「ふーむ……話を聞く限りキノコは、今日中毒に使われたキノコ類はこの辺で採取出来ると考えて良い…のかい?」

 「私も実物を見ている訳ではないので断言は出来ませんが、日中ここで聞いたオーイさんのキノコのお話と、私が見た症状は非常に酷似していました。」

 「……村長、昨日の件の犯人は今日の件とは無関係とみて良さそうかい?」

 「先ず、オーイさんは今日私達と一緒にいましたので除外して貰えれば…と。

 それに、今日の中毒の規模はあまりに酷く、私達が居ないまま、ドクジーさん…診療所の老医師の方のみで対処した場合、最悪重症者は切り捨てられる可能性がありました。わざと毒を飲んで疑念を躱すにしてもあの症状は乱暴が過ぎます。

 何より、今朝私は村長さんの行いを糾弾したばかりです。もし私がその場に居たとしたら、恨まれて、どさくさ紛れで私が事故に見せかけて……という可能性、考えませんか?」

 「物騒だが……まぁ考えられなくもないか……。

 キノコ、キノコ……か…………では不遇の事態を未然に防ぐという意味で、光学迷彩用意・移動用アーム・外部採取ボックス開口・夜間駆動静音用意。」

 『光学迷彩~』からの言葉のトーンが一段下がった。

 それに呼応して床や壁が僅かに縦に揺れ動く。

 「ジーニアスさん、何を⁉」

 家全体の異常に気付いて立ち上がるシェリー君。それに対して自称そこそこ天才は落ち着いた様子で制止する。

 「探索範囲はこの森の中。採取対象物は菌糸類。あぁ、でも全ては採り尽くさないように。可能な限り種類が異なるものを採取する様に。

 採取後、成分分析を行い、解毒薬作成をしておくように。」

 その言葉が終わると同時に家が今度は横に揺れた。

 「さて、これであとは待つだけ。

 さぁ、酒は未だ早いだろうから甘いお茶やホットミルク、あるいはココアは如何かい?」

 相も変わらず自称そこそこ天才はくつろいだまま。そして、揺れは収まった。

 「一体何を……?」

 「何をって、そりゃぁこの辺の毒キノコを採取して解毒剤作りを全自動で始めただけだが?」

 「全自動で?」

 「その通り。家に搭載している採取機能の応用でサンプル採取。そして成分分析装置を使って解析、からの解毒薬作成。

 これが自称そこそこ天才の自慢の発明品だ。中々だろう?」


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