商会の裏には同級生


 「パニ!騎士くれ騎士!」

 「パニンニ様、依頼の品をお願い出来ますでしょうか?」

 「パニンニ様、頼んでいたお花の進行状況は如何でしょう?」

 「パニンニ君、息子のプレゼントの剣、用意出来てる?(ヒソヒソ)」

 「パニンニ殿、以前依頼申し上げた物は、出来ているだろうか?嗚呼、金子は用意出来た故、先にこれだけは渡しておこうと思う。」

 「ああ、パニンニさん、町の人達が用意出来ていると聞いたので、私の分も、出来ているでしょうか?」

 「ドウモ、イライシタモノ、クダサイ」

 朝食を終えると、大人から子どもまで、幅広い面々がパニンニの元へとやってくる。

 小生意気そうな子ども、修道女、老婦人、見た事の無い民族衣装を纏い、刀剣を二本携えた男、冴えない目立たない顔も覚えられない男、鎧兜に身を包んだカタコトの言葉の……性別不明の誰か。

 「人気、だねぇ。」

 荷物を降ろしながらスカーリは腕を組む。

 行商のフリをしながら動いていた時、安い材料で幾つもの工芸品を作り、行商の顔を販売物の観点から作っていたのは主にパニンニ。

 その時代は下手に目立つと本職の手前、都合が悪かった。だからあくまで偽装と偽造が主で、活躍は抑えられ、本人にとっても息苦しい時代だった。

 今は寧ろ目立つ位で丁度良い。

 最初はその辺の地面に転がっていた枝を髪留めにして工芸品として売っていた。

 作っている姿を見た子ども達から髪留め以外のリクエストが届くようになり、材料が尽き始め、子ども達に金を要求するのは流石に……という事になり、材料を加工費代わりに要求する様になり、現在に至っている。

 それを続けていたから、今情報が手に入って来た。

 「どうも不自然じゃないですかい?」

 馬車から荷物を降ろして荷車に載せ替えて町を歩く道中にデカンが首を傾げた。

 ちなみに、パニンニは馬車の見張りに残している。

 「いきなり何の話だい?」

 「いえ、この町に来た時は、町がもっと静かだった様な気がするんでさぁ。」

 町の風景をキョロキョロしながら見回す。建物が急に生えた訳ではない。大事件が起きて破壊されている訳でもない。ただ、人の数が異様に増えている上に人の動きが忙しなくなっている。

 「アタシらが来たから……じゃないね。」

 「寧ろ俺達はゆっくりする様にしてる側だからねぇ。

 なんだって商人がここまで増えたんだろうねぇ?」

 「あー…それが原因ですかい。」

 「……気付いてなかったのかい?」

 「いやぁ、面目無いでさぁ。」

 「馬車を見てみな。全部同じマークの商会さね。ありゃぁ、バックドール商会のさね。」

 



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