かいてき三人組は仕事をしているものの
この町では今、昼夜問わずに絶え間無く馬車が駆け回っている。
この町は別に『眠らない町』という訳では無く、夜中でも明かりが灯って闇がやって来ない……という訳でもない。
強いてこの町の特徴を上げようとするのであれば、町を維持する最低限の流通はあるが、特別大きな商会が牛耳っていないという事。大きな街道が町の横を通っているという事。その二つだ。
そんなこの町が昼夜問わず騒がしい理由は簡単。数日前から商人がとある商会の看板を掲げて昼夜問わずに活発に人々に物を売り続けているから
熱心に物を売り、隙有らば懸命に名前を売っている。利益は最低限。代わりに大量に販売する事で利益を確保する薄利多売を続けている。
商品が無くなれば商人は街道を利用して商品を新たに補充して更に売る。その商法は効果を発揮し、順調に人々に名前と商品が行き渡っていった。
太陽が昇って暫くして、そんな町に獰猛な虎と武器を具象化した紋章を掲げた馬車が町へと戻ってくる。
「さぁ!今日も今日とてやるよ!」
馬車から降りた女が窮屈だったと主張する様に陽光を浴びて身を反らす。短髪の赤毛に大きな瞳に長いまつ毛。馬車に乗っていた他二人と比べて特別大きいという訳では無いが、その堂々とした姿勢と気風の良さは大きな存在として人の目に映る。
「その前に朝ご飯でさぁ。毎日バランス良い食事を食べて、よく寝て、よく笑って。それが出来なきゃ出来た商人とは言えやせん。
今日の当番は俺!という訳で、このデカンの大雑把飯で今日は輝かしい勝利をもぎ取っていきやしょう!」
スポーツ刈りの大男が更に馬車から降りてくる。
巨体に強面、無骨な服装と服を着ていてもその下から強く主張する雄々しき筋肉。初見で子どもや婦女子が恐れ慄く事間違い無しの大男だが、その実は純情で涙脆く、心優しい。子ども曰く、『力持ちのお兄さん』。
「じゃぁ、あたし等は片付け……いや、アタシ一人でいいか。」
「あぁ、ごめんよぉ。
約束の品物が未だ出来ていないからよぉ……あと三つだけなんだよぉ……」
馬車に乗っていたのは三人。内二人は運んでいたものを降ろして朝ご飯の準備を始めているが、一人、未だ馬車から降りられない者が居る。
手元で何かを作業しているからというだけでなく、子どもの頃から若干の猫背。その影響で顔も若干下を向いている。そして、眠そうな目と自身の無さそうな態度は他二人と比較して更に強調される。
如何にも自信が無く、覇気が無く、主張しない様に見える男だ。
が、その手元は自身に満ち溢れ、目的達成の為に技術を振るう意気込みが見え、手の中で出来上がる物は男の価値を雄弁に主張している。
「構わないさね。そればっかりはアタシ達じゃ手伝えないんだから。」
「そもそも頼んだのは俺でさぁ。文句は言わねぇさぁ。」
男の手元には木材。しかも、商品にならないような廃材がある。
しかし、その廃材は男の技術によって
廃材とは到底思えない作品になっていた。
「さて、今日はあの子から連絡は来てるかねぇ?」
「姐さん、落ち着いて下せぇ。」
「そうだよぉ。いざとなれば馬車で飛んできゃ良いんだし、心配しないでも大丈夫だよぉ。」
かいてき三人組。絶賛仕事中である。
が、その仕事の範囲はスバテラ村の周囲。馬車を飛ばせば半日足らずの距離で行われている。
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