集団中毒事件
診療所の密度が高かった時、老医とシェリー君は最低限中毒症状の人間への対処について話した。
簡潔に言えば『兎に角食べたものを吐かせる。』・『その後用意した薬を飲ませる。』だった。
大雑把では有るが、やって来た連中には漏れ無くその対処を行い、それでも駄目ならば再度診療所に来る様に言ってある。が、ご存じの通り、現在診療所は閑散としている。
シェリー君が見た村の連中は確かに皆判を押した様に同じ症状であった。全員が胃潰瘍やストレス性の胃炎を一斉に患ったのであれば話は別だが、この場合食中毒と考える事自体は不思議ではない。
しかし、集団の食中毒が起きた時、情報が無い状態で考えるとしたら、原因としては同じ食品を食べ、それに誤って毒が混入していた事故と推測するのが自然だ。
老医は『食中毒
『言葉の
私は不思議な事に何故か前者をよく知っている上に馴染み深いが、一般的にはどちらでも使う事が出来、どちらの意味で使っても誤用だと大声で指摘する事は出来ない。
が、よく思い出してみて欲しい。あの時老医は『まったく、厄介事が次から次にやってくるものですな。昏倒事件といい、今回の食中毒事件といい、物騒極まりない事ばかりが起きている。シェリー嬢もどうかお気を付け下さい。』と言った。
老医は昏倒の一件と食中毒を並べて考えている。老医の中ではこれらは厄介事で、物騒極まりない事で、意図的に起きたものである訳だ。
そこには何かしらの確信の根拠がある。
老医はシェリー君の質問を聞いて動きを止め、シェリー君を見て、逡巡している。
矛盾する二つの思考はせめぎあい、暫くして答えが出た。
「そうですなぁ……身内の恥を晒す様で恥ずかしいのですが、今回の食中毒の原因は毒キノコ。しかもこの近辺によく生えている毒キノコです。」
陸の孤島の診療所。同一の薬を使用しているにも関わらず薬の数が足りなくはならなかった事、若者達が毒キノコで中毒を起こしていた話を老医が口にしていた段階である程度察しはついていた。
ある程度中毒が起こる事前提で薬の用意がされていた訳だ。しかし、キノコを生業としている村の人間が近辺に生えている毒キノコで集団中毒を起こした。
確かに、悪意を感じるな。
「この近辺に住む人間は余程の間抜けでも無い限り食べる事は考えられませぬ。ここまで中毒症状が一斉に起こるのは……」
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