自称そこそこ天才と少女の亀裂
「聞いた話によれば依然起きた件では馬車がバラバラに壊されていたと。正直その頃私は別の場所に居たのだが、現状をぱっと見てみれば、私の家がやったと取れなくも無い。そもそもその頃何処に居たかを証明する証人を呼ぶ事が不可能に近い。
体調不良についても原因の確定が出来ない。実際に診察してみないと酸欠でそうなっているのか、それとも別の理由なのか解らない。が、これも自称そこそこ天才がやったと考えるのは不自然ではない。ガスも私が作ったと思われる可能性が無くも無い。
ちなみに作ろうと思えばこの程度のガスから十倍えげつないガスまでなら今の設備で作れる。
解らない事だらけ。だが放っておく訳にもいかない。
それは人道的・倫理的観点からそうであるが、同時に私の身を守る為にもそれは必要だ。
このまま万が一森狩りをされたら見つからない自信はあるが、『見つからない』・『見えない』『魔道具』と騒がれるのは個人的に困る。
という事でそのなんだか解らないものを倒す事にした。何か問題は?」
茶は飲んでいない。茶菓子も口にしていない。愉快さが無くなって鋭い知性が剥き出しになっている。
「問題……そうですね。私としては可能であるのなら対話を望んでいます。
相手との対話の後、分かり合えなかったら……制圧。というのは。」
「甘いな。君は酸欠状態の人間の心臓を抉り取ろうとする相手と対話をするのかい?
僕なら四肢…が有るのなら四肢を
それでも安心は出来ない。未知が何を生み出すかは解らない。未知が希望を生み出す事もあれば、どうしようもない救いの無い絶望を叩き付ける事もある。
君は優秀かもしれないが、それ以上に危うい。」
自称そこそこ天才とのティータイムでは見えなかった部分が露骨に見え始めている。
発明家を名乗るだけあってバイアスや楽観視を可能な限り削ろうという信念がある。要は、自分の事を妄信していない。
その考え方は、自分に都合の良いデータや光景に目が眩んで未来に大きな亀裂を生み出す事を知っている人間のそれだ。
「確かに、私のこの考え方は非常に甘いと酷評された事があります。……いえ、未だに酷評されています。『自惚れは人を殺す』……と。」
まったく、人を評する時に殺すだなんて物騒な台詞を持ち出すとは中々に狂気を感じるね。ハッハハハハハハハハハハハハハハ!
「それでも、殺戮という安易な方法に自分から落ちていくのは容認出来ません。」
男の信念、少女の信念がぶつかる。
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