生態系の一撃
足の数は確認出来ているだけで12本。木の上を這い回ってこちらを的確に殺しに来ている辺りから察するのは容易だが、当然のように12本の足がブレず規則的に足並みが揃ってやってくる。
透明化といい、森の上を闊歩する安定性といい、何より木々の上に大きな痕跡を残さずあれだけの重量を動かせる事といい、これを作った人間の制作能力はそこそこあると評価出来る。
が、しかし。動きが機械的なのは致命傷だ。見えないアドバンテージを捨ててのこのこここまで出て来たのは要改良。そして、もう一つ 。
「大人しくして頂きます。」
先程の慣性
土煙は放物線を描く筈だったのだが、見えない壁に阻まれて急に地面に落ちていく。
本丸の場所が割れた。殴るべき場所も……だ。
体を纏っていた薄布が風に靡いたかと思えば形が変わる。
右の拳を中心に集約されていき、歪なボクサーのグローブが如き形へと変わる。
何が歪かと言えば、拳の正面部分、要は殴った時に相手に当たる部分が鋭く尖っているというのもそうだが、右腕に巻き付いた布はそのまま胴体を部分的に覆い、下半身へと伸びて、両足を保護する様に覆って固定していた。
まぁ、金属の装甲を貫通させる気満々な訳だ。当然、半端な魔法で体を強化しても骨を砕ける程の殺傷力はある。
そして同時に、それだけの衝撃を加えようとすれば反作用でこちらも無事ではない。ということで、破壊する拳と下半身の骨格補助の役割を一枚で担っている。
このパンチは非常に強い。何故なら
「バイオミメティックスと言うそうですね。
他生物の器官やシステムを人間の技術に流用するものだそうです。
生き永らえるために進化し、編み出され、今の今まで淘汰されずに生き残ってきた生物の切り札たるシステムや機構が弱い訳がありませんよね?」
今回は甲殻類の一種、
人の掌に乗るサイズであってもガラスを砕き、人間の骨さえも砕ける
それをコンパクトかつ部分再現とは言え人間サイズでやればどうなるか?
「中に人が居るのなら、無事でいますように!」
その場で迎え撃つ……と見せかけて足の固定を解除。
見えない多脚を掻い潜り、先程特定した見えない本体へ……
身体能力を魔法で上昇させた。
布自体も強度を上げている。
その状態で更に蝦蛄システムが炸裂する。
金属が変形する音が聞こえ、何も無かった空中に亀裂が入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます