獣の様な人か?人の様な獣か?それとも?
人間レベルの知恵を付けた獣は面倒だ。
人間の様に脆弱な肉体でもなく、のろまな走力でもなく、剣や槍よりも身近に備わった爪や牙という武器を持っている。
何より、自分たちより人間の方が弱く簡単に殺せるという事を知っている。
抑制の出来ない上に狡猾な人間も非常に面倒だ。
ただでさえ抑制の出来ない人間の欲望。それだけならタガが外れてお縄になって仕舞いだ。
抑制は出来ないが情報を隠し自分の欲を満たす程度の狡猾さを持っている。
獣の様に強靭ではないが強靭さの隙を突き脆弱な面を突き刺す事は出来る。のろまで走力は無い素早い足を手に入れる術を知っている。爪や牙に近寄らずに獣を殺す方法を知っている。
どちらにしてもシェリー君の前途は多難だ。
そして、そのどちらでも無い場合、死力を尽くさねばならなくなる。
丁度良い。ロクでもない事態の連続は成長と経験になる。それが如何にロクでもなく下らなく、救いようが無くとも、用途は存在する。
さて、次にどうするかね?
「今まで子ども達が襲われた様子はありませんでした。しかし今回、紛れもない襲撃事件が起きました。
この枝と襲撃の件が無関係とは思えません。一体どういう事でしょう?
この枝を折れる何かが森に居る。それは過去の事件と矛盾はしない。しかし、子ども達は誰も危害を加えられずに何度もそこで遊んでいた。
しかし、今回襲撃事件が起きたことは事実。襲撃対象を選んでいる?それとも『森の怪物』という存在は複数存在する?」
子どもが危機に晒されている可能性を考え、慌てている。
それはそうだ。シェリー君が考えている可能性の怪物は、頑丈な木の枝をへし折り、馬車を粉砕する程度の物理的な力と数年の間見付からずに隠れる隠匿能力を兼ね備えている。
見つけるまでに一苦労。たとえ見つけても制圧に一苦労。最悪逃げられてまた見つける必要性が発生しかねない。
そこまでいけば被害が周囲にばら撒かれかねない。
シェリー君はそれを異常に嫌う。
自分が実弾で撃たれようと罵詈雑言を投げつけられようと刃が突き付けられようと構わないが、それだけは異様に嫌う。
守る義理も義務も無いというのに、大変なことだ。
「一度状況を整理するといい。
慌てても喚いても被害者が減る事は無い。起きた事を引っ繰り返せないのなら確実に次を叩き潰す事を考えるといい。
慌てて無策で突っ込んで、自分諸共周囲を危機に晒すものではない。
冷静に、振舞うといい。かの淑女の様に言うのなら、『汝如何なる時でも淑女たれ』と言ったところだ。」
「………はい。」
握っていた手が、僅かに緩んだ。
それでもシェリー君は未だ焦りを抱えている。
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