過去数話をおさらいしてみよう

 「おなかへった!」

 「お昼どうする?」

 「おかーさん、ごはん用意しているです。」

 地図を改訂している間に太陽はすっかり昇り切っていた。

 「あー、じゃぁちょっと昼にしようか。3人とも、待ってるからゆっくり食べな。

 用意してくる。モリー、ちょっと待ってて。

 あ、手伝いは要らないよ。朝ご飯と一緒に作った昼ご飯だから。」

 「でも、」

 シェリー君が立ち上がろうとしたのを孫娘と3人が制止する。

 「地図作った!」

 「作戦作っといてくれない?」

 「お仕事した人は休むです。」

 「そういう事。子ども達がこんなに楽しそうにするのなんて私一人じゃ出来なかったんだから。素直に待ってて。

 それにこれから休みたくても休めなくなるから。休んでおいて。」

 そう言って既に仮家の扉を開けて飛び出した3人を追いかける様に孫娘も退出していった。

 「……何をしましょう?」

 シェリー君は常日頃から勤勉と真面目の典型。真面目が過ぎて親しい人間が止めようとする程度には行き過ぎのきらい・・・がある。

 それ故に私の教授に対応出来ている訳だが……

 「課題を少しだけ片付けておきましょう。」

 「よすんだ。他にやる事があるだろう?」

 真面目が過ぎるのも困りものだ。

 「冗談です。」

 「分かっていてもそれを止めざるを得ない。

 止めなければやるからね。」

 非難めいた視線を送る。

 真面目さや勤勉さに対して『それは如何なものか?』という話だが、止めないと副会長状態になりかねない。

 「バレていましたか。」「当たり前だとも。」

 「では、私が気付いている・・・・・・事も?」

 「あぁ、そうでなくては困る。」

 意を決する様に口を開く。

 「何かが、居ますね。」

 それまでの談笑の雰囲気が反転して深刻な顔をする。

 「あぁ、少なくとも愉快ではない事態を覚悟せねばならない。」

 前の子ども達との交流。地図の改訂と子ども達を遊ばせる事が主目的ではあったが、発見があった。

 子ども達との交流内で重要な物的証拠が見付かっていた。

 何か、考えてみるといい。









 「ベーターさんの持っていた枝。あれを折るだけの力があるか?それともそれだけの重量があるか?魔法で折ったか?それが問題ですね。」

 ベーター。語尾に『?』を付けていた子どもが持ってきて見せた木の枝。

 この辺りの樹木は異常に耐久がある。それはこの辺り一帯に建てられた建物を見ての通りだ。

 雑に手入れや改築が無くとも壊れやしない。火が点いてもまともに燃えやしない。そのレベルの頑丈さを持つ木の枝が、加工していないとはいえへし折られていた。

 それだけなら巨大な熊が居て枝をへし折ったとでも考えれば良かった。

 が、エルフごっこをしていた子ども達の地図改訂の時に生き物の話が出てこなかった。

 あの枝をへし折れるサイズの熊が居た場合、真っ先に子ども達の話に登場して然るべきだ。

 実際に見つけていなくとも森に棲んでいるのならば、その痕跡は子ども達の目から逃れる事は出来ない。

 この状況を説明するには……

 「考えられるのはあの枝を拾ったのは別の場所である場合。然程頑丈ではない枝が折れたのなら問題にはなりません。

 しかし観察したところ、あの宝物は森にある木と同質のものでした。

 他に考えられるのは枝を折ったのが熊ではあるものの既に死んでいる場合。しかし、あの枝の断面を見たところ、折れたのは最近の事。これは楽観にも程があります。

 他には……この森には枝を折れるだけの力を持ち、身を隠す知能や能力を持った狡猾さを持つ存在が居ること。」

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