子ども達は知っている
「オーイ姉ちゃん!オバケ出たの⁉」
食べ終えた頃に子どもの一人が単刀直入にそんなことを口にした。
オーイが固まる。シェリー君も少し驚く。
「ねぇねぇそういえば出たの出たの!?オバケ出たの⁉」
キラキラした笑顔で訊いてくる。そこに悪意や心配は無い。単に好奇心で訊いているだけだ。
「アル、えーっと…どこでそれ訊いたの?……ベーターとチェルシーも、それは知ってる?」
しかし向き合う孫娘はそれに気付いていない。子ども達が何処からそれを知ったか?どう対応すれば良いか?不安を取り除くにはどうすれば良いか?それだけで頭が一杯になっている。
「大人達が言ってたです。聞いてたです。お化け出たです?」
「
大人達は子ども達が気付かないように考えはいた。が、所詮は『子ども騙し』程度の隠し方だった。それで隠し通せると甘い考えを抱き、こうして子ども達に露見している訳だ。
子どもこそ性質が悪い。体は小さく大人が隠れられない場所に潜み、偏見も植え付けられていない。好奇心に溢れて記憶もバカにならない。嘘も吐かずに辺りの大人に知った事を躊躇いも容赦も無く凄まじい勢いで拡散する。
それなのに『子ども騙し』と大人は油断するから更に性質が悪い。
大人よりも聡明で鋭い。非常に手強い。
「えーっと……えっと、えと?」
シェリー君に向けて『救援求ム』の視線を向ける。
「お化けかどうかは分からないです。けれど、少し森の方で大変な事が起こっていたので、それが解決するまで森には近付かない様にしておいてください。」
「え⁉ヤダ!遊びたい!エルフごっこ!」
「なんで?危なくないよ?
「森は怖くないです。皆おかしいです。何でです?」
困り顔の二人の表情が驚愕に変わる。
「あなた達、森に入っているのですか⁉」
「前に言われてたよね⁉森は危険だから入るなって!」
目を丸くして驚愕するシェリー君と目を見張って顔を真っ赤にして引き攣った顔の孫娘が子ども達に迫る。
『悪手』
シェリー君は直ぐに表情を抑えたが、孫娘はもう遅い。
三人とも孫娘の鬼気迫る表情で一瞬怯んだ。が、それが引き金となって抑えていた感情が爆発。反撃へと転じる。
「ヤダヤダヤダ!つまんない!」
「なんでダメなの⁉エルフごっこは危ないから⁉何度か落ちたけどケガしてないよ?大丈夫だったよ?落ちた時は溺れない様に息を止めてロープで引っ張ってもらうんだよ?」
「皆遊んでくれないです。お父さんもお母さんも怖い顔です。エルフごっこがしたいです!」
3人はこの状況を楽しんではいる。が、誰も相手にしてくれない状態に不満が無い訳ではない。しかも
孫娘は意外な反撃にたじろぎ、子ども達は目を赤くして反論。これではまともに孫娘の話を聞く態勢になれない。
顔を真っ赤にして反論する子ども達は大声で喚きこそすれ、決して手を出さない点は称賛に値するな。
さて、このままでは収拾がつかない。さて、シェリー君の次の一手や如何に?
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