校外イベント説明会4


 「採点についてはボチボチ…結局力でど(う)にかせ(い)って事か…。

 己、己か……」

 商売嬢がぼやく様に口の中で呟く。

 聞こえていないが、淑女の視線が僅かに強くなり、催促する。

 「あ、すみません。

 じゃ、次。家の力は使って(い)ですか?」

 それを口にした途端、数人の表情が動き、そして何事も無かったかのように一秒後には同じ表情を作っていた。

 そう、この課題におけるこの学園の人間が辿り着く最適解。最も楽な解決方法は解りきっている。

 『貴族の力を使う』以上だ。

 別に権力は脅しにだけ使うものではない。交渉における切り札や資金力、コネクションとして多彩な力を発揮出来る。

 家の名前を少しだけ匂わせるまでもなく、ここまで大きなイベントとなれば情報に精通している者は嗅ぎ付け、そして次にこう考える。『コネクション作りの良い機会だ』と。

 コネを作りたい家の令嬢に取り入って、町村を一時的に活性化。あとはそこから家に取り入るだけ。

 一人・・を除き、何もしなくとも一時的繁栄は約束される。まぁ、三カ月終了と同時に夢から醒める事も約束されているがね。

 これだけなら意味の無い一人オリンピック勝者のみの大会。が、採点にあそこまでの対策を講じているかの淑女がそれを許す訳がない。そして、商会嬢はそれを知った上でこの質問をぶつけている。

 「当然、貴女達の親の力を使う事は厳禁とします。破れば問答無用で即失格。疑わしきも大幅減点または失格となります。

 これは貴女達の『淑女としての意志』・『貢献』を試す事が目的。場所を校外に指定しているだけで授業の一環。原則として学園内のルールが適用されます。

 貴女はテストの点をお金で買いますか?

 貴女は課題を雇った家庭教師にやらせますか?

 それに、意味があると思いますか?以上です。

 なお、そちらの不正調査に関しても信頼出来る第三者と私、有志の貴族の方々で徹底的に行います。

 不正無い公平性を徹底しますので安心なさい。」

 最悪家の力を使えばどうにかなるとタカをくくっていた連中の血の気が引いているのが目に見える。

 中には震えだす者も居た。

 それはそのとーり。

 ま、私としてはテストの点を金で買ってバレずに一生自分の能力をボロ一つ出さずに偽装し続けるだけの能力があり、有能な家庭教師を探し、雇える能力を自分で手にしているのなら別に問題無いとも考える。

 まぁ、それならそもそもそれをやってのける人間に課題やテストの必要性は無い。

 出来る人間は『やらないで成功する』か『文句を言わずに一欠片pieceofケーキcakeをぱくり』で楽勝だ。

 おっと、そんなこんなで商会嬢が本当に訊きたかった事が飛んでくるぞ。

 「それがダメなら、自分の力なら良(い)ですか?」

 細い目を更に細めて笑った。



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