殺し屋と逃がし屋の違い
『逃がし屋』
殺しの依頼を受けて標的を殺すのが殺し屋。
対して逃がし屋は殺しの依頼を受けて標的を殺したように見せかけてこっそり逃す仕事だ。
依頼人側には巧みに殺しを偽装して騙し、標的側には説得して身を隠すように仕向ける。
当然の様に殺しに精通した上で上記二つを高精度で行わねばならず、依頼人側にバレれば無論殺される。
通常の殺し屋以上に秘密を厳守する必要があり、通常の殺し屋以上にリスキー。
何せ標的を一時的に逃せても何かの弾みで誰か一人の生存でも露見すれば命を狙われる。最短でも標的が天寿を全うする迄露見のリスクに怯えなければならない。
バレる訳がない。バレれば今までの依頼人全てから報復として命を狙われ、殺し屋連中からは敵対者として命を狙われて死ぬのだから。
だからこそ、敵陣ド真ん中。自分達を生け捕りにした圧倒的格上が居る中で無謀にもニタリは短剣をひっそりと構えた。
何処から漏れた?
キリキ……違う、奴は今、『なんで知ってるんですか⁉』と驚いていた。コイツはバカで単純だがだからこそ嘘やらハッタリやらを自分で使う事は無い。俺もコイツも決して話していない。
同業者が調べ上げた?そこまで間抜けはやってない。
逃がした連中が誰か捕まってバレた?
違う、それが本当だったらこんな風に騙して俺達を連れてくる意味は無い。即刻始末していた筈だ。こんな風に本拠地に誘う理由は……あぁそうだ。
「俺達を絞り上げてぇ、今まで殺したハズの連中を纏めて始末するってハラかぁ?
オィ、キリキぃ手前も構えろよぉ、そしてぇ、気合ぃ、入れろよぉ。」
臨戦態勢。殺しは大嫌いだからこそ逃がし屋をやっている訳だが、殺しに来る連中は別だ。この業界でそこまで温い理想が通じるとは思っていない。
逃がし屋だと知れた時の覚悟はしていた。
ただでさえロクでもない死に方が約束されている殺し屋の世界の中でも更にロクでもない
それでも…だ。
人を殺さないでいようという甘い考えなのは承知しているが、それでも人を殺して食う飯がうまいとは思えなかった。人を殺して着る服が温かいとも思えなかった。人を殺して築いた家に安らぎがあると思えなかった。
そのツケを今払う。
必死に、不細工に、惨めに抵抗して、上手くいけばキリキくらいは逃がせる…
「ニタリさん!落ち着いて下さい。この人達多分悪い人じゃないですよ?」
隠し持った短剣とレンを阻んだのはキリキだった。
大槌は部屋の片隅に置いてあった。
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