仕事の結果

 「でぇ、ちゃんと始末はしたんだろぉなぁ?」

 サイクズル商会の一室に三人。

 一人はこの商会の主。もう二人は纏った黒いフード付きの外套で誰なのか分からない。

 「あぁ、死体は残念ながら見せられないがなぁ…」

 「ごめんなさい!頭を潰しちゃって運んでこれませんでした!」

 外套の片方が折れるように勢い良く頭を下げた。

 「別に構わねぇよぉ。殺せたんだろ?始末も当然してる。それで顔も無いなら都合が良い。」

 不敵な笑みで頬杖をついていた。

 自分が依頼して殺したというのに、内一人は長年自分の部下として尽くしてきた奴だというのに、笑っている。悲しむ素振りもない。

 「薄情だなぁ、会長さんよぉ。

 自分の可愛い可愛い部下さんを殺しておいてぇ、随分楽しそうな顔じゃねぇのぉ。」

 フードで顔はほとんど隠れているが口元だけは辛うじて見えている。

 蛇の様な声で問いかけるその口角は少しだけ上がっていた。

 「あぁ?殺し屋が何言ってんだ?

 殺したのは手前テメェらだろうが。

 それに、俺の可愛い可愛い部下なんかじゃねぇよ、アレ・・は。」

 先刻頭を下げた方の外套が体を少しだけ震わせた。

 「……どういうことですか?」

 「アイツは便利だった・・・

 面倒や厄介仕事を押し付けてたらやるし、力はあった。周りの顔色も窺えて評判も良い。

 何より仁義だか恩義だか知らねぇが逆らわずに俺の言う事を聞いた。だから使ってた。

 ソレが意見して言われた事以外の余計な事考え出した。そんなモン置いておいたらロクな事にならねぇ。もう厄ネタだったんだよ、あれは。

 商会ウチの内情知ってるからその辺に放り出す訳にもいかねぇ。

 だからお前らを使った。邪魔になったからな。」

 サイクズル商会会長は『商人は使えるものを使って金を儲けるもの』・『使えるものは使い倒せ』・『使えないものでも売って金にする』・『金にならないものは価値は無い』・『邪魔ものは始末する』・『金を儲ける事が本質』。

 そう考えている。

 殺された商人は今まで『使えるもの』として使い倒され、今回『邪魔ものは始末する』という方針で始末された。

 「ハァン、ご立派な思想でらっしゃる。

 お陰で俺達殺し屋は食いっぱぐれずに済むって訳だぁ。」

 「…御馳走さまでぇす!」

 「ホラ、コイツが報酬だ。

 さっさとバレない様に消えなぁ。」

 無造作に放り投げられた袋はチャリチャリと音がして、ズシリと重かった。


 外套の二人組が誰にも気付かれずに外へと出る。

 商会から離れ、近くに待たせてあった馬車に乗り込んだ。


 「やー、ばれないもんッスね!

 お疲れ様でした。これで、分かったッスよね?」

 レンがフードを取って馬車の中で一息ついた。




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