If?:踏み躙られる正義の悪夢と号砲59
忘れてはいけない。
私達は犯罪者にとって忌むべき存在。憎むべき存在。排除すべき怨敵。
私達はあくまで犯罪を許さない弱者の味方。彼らを憎むことも、傷付けることも許されない。
なぜなら彼らも弱者なのだから。
「でも、それはそれ。
こっちの命が無かったらそもそも私達の使命は果たせない。
敵意や殺意には的確に制圧。油断しないで。」
「ショーチシテルッスヨ。センパイシンパイシスギッス!」
辺りの光景が変わっていく、下水の悪臭がここまで漂ってくる中でヘラヘラした後輩の表情だけが浮いている。
「解ってない!忘れたの?この前西の方で肉体改造の術式が流行った事。
まだ犯人と経路が解ってない。
この辺にも来てるかもしれない。」
魔法術式。通称『術式』。
魔力によって編まれ、魔力を使用者の意思に沿った形に変換するもの。それが術式。
『魔法』はエネルギーたる魔力と、それを使用者の意思に応じた形にする術式のセットだ。
要は術式だけでは動力が無い為に、そのままでは何も出来ない。
魔法は術式を作り出すと同時に使用する。その関係上、術式は維持しなくても問題はない。
この場合の『術式』は術式を組んだ人間の手から離れた後、一定期間その性質を保持し、不特定多数の人間が規定量の魔力さえ流せば術式に記された魔法を行使することが出来るシロモノの事だ。
術式を維持するのは難易度が高く、作れる者は少数だが、術式を起動するに足る魔力があれば誰でも高度な魔法を使えるこれはとても便利で、とても恐ろしい。
故に、こんな事件が起きた。
西のとある都市で怪物が出た。
3mの巨躯。
血走り赤く染まった目。
涎を滴らせて剥き出しになった牙。
鋼の刃をも通さない頑丈な皮膚。
動くものを尽く本能のままに破壊するその様は正に怪物と言えた。
警兵と冒険者達が駆け付けて、町の破壊と怪我人、最初に近くに居たと思しき犠牲者を出しながら応戦、最終的には急に苦しみ出した怪物が暴れ悶えて息絶えて終わりを迎えた。
都市の警戒を潜り抜けてやって来た未知の怪物。その危険度故に調査は早急に行われ、怪物の正体が割れた。
人間だった。
『人間の肉体を強制的にかつ急激に活性化させる術式が施されていたらしく、それが3mの怪物を生み出したであろう』という結論になった。
息耐えた原因は『過剰な変化に対応する為の術式が使用者の魔力不足で成立しなくなり、絶命した』というところで決着した。
見付かった術式の残滓は断片的で、未だに誰が作ったか、具体的にどのような効果が有るかは解っていない。
しかし、術式て怪物になった人間(以後改造人間と称する)の犠牲者が調査の結果裏社会の人間だったこと、その組織が雲隠れしたことから近辺の都市の警兵には警戒が促されていた。
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