If?:気まぐれで変わった破落戸達の最後の悪夢17
自分は先程まで、裏通りで捕まっていました。
詐欺師の方に捕まり、その後、見知らぬ…文字通り今もって名前も顔も、どころかまともに声も知らない方々に運ばれていった先は大通り。
街灯が輝き、人々の笑顔が照らされ、楽しげな話し声が響き、夜店が出て、それらの上に宝石が如き星の輝く夜空が大きく広がる街並みでした。
何処までも見知った場所でした。
手足は有ります。怪我も有りません。何かを盗まれたという事も有りません。懐のお金も取られた形跡が有りません。
無事、私は帰ってきました。
これは一体どういう事でしょう?
ふと、後ろで何か、誰かが動く様な気配がしました。
振り向くと、そこは裏通りへと続いているであろう一本道が視界一杯に拡がりました。
一面に広がる真っ暗闇、そこから悪臭漂う生温い風がごうごうと不気味な音を立てながら吹いてきます。
悪寒さえ感じるそんな場所に蠢く影が幾つか……
それが誰か、私には本来解り得ません。
名前も、顔も、全く見ず知らずの相手。
ですが、その方々が自分にとってどんな人かは解ります。
「あのッ、あの!」
不気味に体を這い回る向かい風が歩を止めようとしますが、何とか堪え、足を今一度裏通りに向けようとして……
「来るな。」
足が固まりました。
暗闇の中から放たれたたった三つの音。しかし、それは強い信念の様な拒絶の意を私に抱かせました。
自分達と私は決して近付いてはいけないと、怒りを孕み、警告を孕み、戒めを孕み、そして、優しさに満ちていました。
「ですが、お礼を…………」
足は相変わらず拒絶の言葉に囚われ、動きません。ですので、せめて手を伸ばそうとして…
「ナーニ言ってんの?君?」
「何の話だよ。お前みたいな世間知らずちゃん、オイラ達知らないよ。」
「それ以上コッチ来る。攫う。売る。壊す。食べる。とても怖い!」
その手も止められました。今度は違う、複数の声。
しかし、同じ拒絶の言葉でした。私が先程までしていた行為を怒り、その行動が招く恐ろしい事態を警告し、今後この様な事が無い様にと戒めていました。
優しさに溢れていました。
「あの詐欺師の方から助けて下さったのは皆様ですよね。
是非、お礼をさせて下さい。せめて、お顔だけでも……」
暗闇の世界へとまたも足を踏み入れようとして。
「近寄るな。」
先程よりも一段と鋭い、怒気を孕ませた、警告が飛んできました。
「世間知らずのお嬢ちゃんに教えてやる。
この先の裏通りは俺達無法者ならず者、
優しいじいさんは居ない。にっこり笑うばあさんも居ない。ガキなんて骨になって転がっている。
俺達はそんな中で生きてる。
だから、手前を助ける奴なんてここには居ない。
手前を助けたのはその辺を偶々歩いていた
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