If3?:無言の解説は続く
炎が轟々と燃える音が聞こえる。悲鳴と咳き込む音、断末魔が響き、それに混じって爆音が建物の中から幾つも聞こえた。
校舎の外からも何かを叩き付ける音が聞こえる。
大混乱。恐慌状態。火も回ってきている。
無論、水道の細工だけではお粗末、粗雑、穴だらけの行き当たりばったり。衝動的犯行でしかない。
毒の混入経路が解らず、ローラー作戦の末、水道を調べられれば細工の痕跡が見つかってアウト。見つかるまでの時間稼ぎと被害者の増加の一助にはなるとしても、それ以上の細工にはならない。
だから、そこにもう一つ仕掛けをした。
排水溝に流れ込んだ水が徐々に蜜を溶かし、最終的には金属と水が反応。炎上する。
木造でかつ、複数個所に油を仕込んでおいた故に、見ての通りの大炎上。
更に、トドメの扉が開かなくなる仕掛けの解説と行こう。
本来、
特殊な環境でのみドアが開かなくなり、かつ意図的にこちらが起こした状況以外ではそんな仕掛けだとは考えも出来ない。
その上で数をこなす必要があり、目立つ事も出来ないからなるべく簡単に、材料も盗んでも気付かれない様なありふれたもので行う必要がある。
これだけの条件を揃える方法だから絞り込める…………が、念の為だ。
あの仕掛けは単純明快。
溶かした蝋をドアの足元に付け、固まる前に扉の留め金の役割となる杭を地面と垂直に、かつ地面に擦れないギリギリの高さで貼り付ける。
後はドアを閉めた時に杭の真下に穴が開く様に
火事の熱で蝋は溶解し、杭は下にずり落ち、穴に挟まってドアの開閉を妨げる。
ん?熱は上に行くもの?蝋が溶ける前に逃げられる?
あぁ、もっともな指摘だ。
だから、各階の水道全てに火種を仕込んだ。
とあるフロア、仮にn階としよう。n階の熱は木造の天井の隙間から上階のn+1階のドア下部の蝋を溶かす。
これで問題無い。
仕掛けは上手く作動して、ドアが開く事は無く、ドアを叩き付ける音と命を奪われる恐怖に歪んだ叫びが聞こえるだけ。
ドアは開かない。
開ける術は無い。
火の手は迫り、煙で燻されようとしている。
次に取る手段は二つ。
『魔法でドアを破壊する。』
数は少ないが、それを試みようとした人間があちこちに居た。
居た。というのは、もう居ないという事だ。
火事で一酸化炭素が充満している空間に酸素を送る様なマネをしたら…………
バックドラフトでボン!
そして、その様子を聞いた周囲の人間は怯え、逆に走る。
あぁ、
校舎の外から、悲鳴と共に何かを叩き付ける音が聞こえた。
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