If3?:火災とは良き凶器であり、悪しき殺人鬼である。
このタイミングで火災を起こした理由。そして、何故火災なのか?
先ず、もう私にはここにいる理由が無くなったから。
ある程度この世界の情報は集めた。
しかし、このまま籠の鳥に甘んじて、資料だけ見ている様ではデータが圧倒的に足りない。
だから出て行く。
が、かと言って出て行こうにも、このタイミングでは退学しては犯人を自白する様なもの。
怪しまれない様に退学になる事は出来るが、それには時間が掛かる。
確実に怪しまれない様にするのは手間がかかるし、下手に確実性を欠いた状態で放置すれば、後々尾ひれがついて、厄介事として未来の自分の首を絞めるリスクが発生する。
断言するには手間がかかる。
ならば如何するか?
怪しむ人間を纏めて尾ひれがつけられない様に、口を利けないようにすれば良い。
条件さえ揃えれば数百人を一度に殺せる火事はこういう場合、非常に都合が良い。
一人ずつ殺していたら蜘蛛の子を散らされるし、抵抗されてこちらが手傷を負うリスクもある。凶器の調達と証拠の隠滅も必要になる。
逃げないように、燃え広がる様に仕掛けをしておけば、後は原初の科学の一つたる燃焼が人を殺し、抵抗されても私が傷を負うリスクは無い(火災で怪我をする間抜けはしないからね)。
証拠は勿論、死体も下手すれば残らない。
うってつけだった。
で、このタイミングで火をつけた理由だが………纏めて始末する場合、どうしても問題が一つ起こる。
教師連中の始末を如何するか…だ。
職員棟はそもそも宿舎と物理的に離れている。初期消火される前に燃え広げるのは面倒だ。
世間知らずのお嬢様なら纏めて焼き殺すのは訳無い。現に今、何人も死んでいる。
教師も教師で、脳筋教師を許容する連中。故に束になった所で私の脅威にはなり得ない。
が、それでも力は生徒に比べて有る。現状に対して生徒より幾ばくか冷静に対応されて、消火活動をされると都合は悪い。
一人冷静な者が居ればそれが伝播して皆冷静になる。
そのまま協力されて無事鎮火されては非常に都合が悪い。
『この場で一人の例外も無く全員が死ぬ事』
それが私の計画。故に、全員例外無く死んでもらう。
話を戻そう。
確実にこの場で皆殺す為に先ず、私は毒を用いて混乱を巻き起こした。その結果、生徒は例外無く自室に軟禁され、職員も全員を調べる為に、そして食事を配給する為に宿舎に全員が集結した。
そのタイミングであれば、生徒達はドアの細工で自室に閉じ込められる。職員は全員宿舎に居て火事に居合わせる………そして。
「ちょっと先生!何とかして下さいまし!」「私は由緒正しきアルメリー家の娘です!さぁ私を助けなさい!」「熱い!熱いわ!」「速く逃げましょう!」「助けるなんて馬鹿な真似およしなさい!」「助けて!たすけてぇ!」
取り調べてドアが開いていた部屋の生徒数人が教師の前に群がり、パニックを起こしていた。
教師は沈静化を図ろうとするも、炎上する校舎で自分達も半恐慌状態。しかも部屋のドアが開かずにドアから断末魔が聞こえる。
生徒迄到底気が回らない。
ほら、全員殺せる。
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