If3?:全てが灰になる。
ベッドの膨らみを確認する。無論、そこには在って然るべきものが在る。
確実を期す為に毛布は濡れている。これで計算式に矛盾が生じる事はない。
さぁ、卒業には些か早いが、最早この学院に居る意味は無い。
最期に役立てて終わりにするとしよう。
熱気が漏れ、助けを求める叫び声がドア越しに響き渡る。
私はそれには構わず、姿勢を低くしてドアを勢いよく開け放った。
次の瞬間、煙と熱気が室内に入り込む。
無防備に吸い込んでいたら気道を火傷して窒息のリスクがあったな。
ドアを開けると広がるのは、黒煙で淀んで1m先も見えない宿舎の廊下。
しかし、その淀んだ中でも輝く灯りが在る。それは揺らぎ、蠢き、大きく唸り、うねる。
光はあちこちに輝く線を描き、宿舎中に拡がっていく。
ゴウゴウゴウゴウ音を立てて燃え盛っていく。
人の肉を、財産を、積み上げてきたものを、命を全て、悉く、焼き殺していく。
排水溝の中にちょっとしたイオン化傾向の高い金属をオブラートに包んで捨てておいた。
時間を掛けてオブラートは溶け、水と金属は激しく反応して………要は燃える。
本来、水場で火を起こした所で直ぐに消えるが、金属火災は別だ。
水によって反応するイオン化傾向の高い金属は水をかけても消火出来ない、どころか炎上する。
油と金属火災の時に水を掛けるのは自殺行為だ。気をつけたまえ。
と、言う訳で、水場から火の手が上がり、後は予め私が仕掛けておいた油に引火して建物全体に回っていく訳だ。
ナイフや毒では一度に殺せる数に限りがある上、他殺の疑いが起こりやすい。が、火事ならば、条件を揃えば一網打尽に出来る上に事故の可能性が多分に在る。
まぁ、今回焼殺を選んだ一番の理由は別に在るのだがね。
黒煙で視界が悪い中、呼吸を最小限に、煙と炎を避けて私は悠々と歩く。
あちこちで悲鳴とドアを叩く音が聞こえるが、しかし、廊下に出て来る者と未だ鉢合わせをしていない。
皆『厳戒態勢の為、外出を禁ずる』という文言を馬鹿正直に守っている?そんな訳無いだろう?
皆火事に気付いていない?では、何故彼女達は扉を必死に叩いているのかね?音から判断すると、拳の骨にヒビが入っている者も何人か居る様だが?
……意地の悪い自問自答を繰り返しても無駄だから答えると、彼女達は逃げていない訳ではない。逃げられないだけだ。
扉を開けようとしてはいるが、扉の蝶番前の床に小さな穴が開き、そこに視認が困難かつ頑丈な小さな杭が刺さっている所為で扉は開かない。
閉じ込められている上に燻り殺されかかっている訳だ。
やれやれ全く、一体誰がこんな事をしたというのかね?
偶然?事故?一斉にかね?
扉は開けられたのに、現在そんなものが在って開閉不可になっているんだ。意図的に起こったに決まっているだろう?
そして、犯人は私だ。
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作者からの疑問&質問です。
投稿時間を私は特に考えていないのですが、何時頃投稿するのがベストですかね?
この場合、何時頃投稿すればより多くの人に読んで貰えるのか?何時頃が読者に対して親切なのか?と言う意味です。
良ければお答え願います。
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