If3?:アールブルー学園 厳戒態勢


 「何かの間違いでは無いのですかな?

 まさかこの学園で殺人事件など………」

 おっかなびっくり。信じられない、信じたくないという感情が生み出した言葉だったが…

 「何故、今の言葉からそんな事を言い出したのですか?

 ミス=メイデイは養護教諭としてだけでなく、医者としての優秀な技量が有る事を御存じでしょう?

 その上で何故、そんな世迷い事を?」

 「ァ。あぁ、そうでしたな。

 私としたことがとんだことを…………」

 ミス=フィアレディーの言葉で直ぐに口を噤んだ。

 「ナーク=テ=ヨルダンはまともに抵抗した跡が見られず………その、……一瞬だったかと。

 自殺や事故の可能性を考えましたが、あれは難しいかと思われます。」

 「成程。

 毒殺の件は?自殺の可能性は無いのですか?」

 「エスパダ=ソド=エジール、パウワン=デン=ボクムズ両名の持ち物や部屋を調べましたが、それらしい毒物は見当たりませんでした。

 更に言えば、二人共顎に針の刺し傷が有り、そこに打撲痕がありました。

 抵抗と破壊の跡も有ったので自殺とも考え辛いかと………。」

 「……………。

 ミスター=アーノルド?そちらは如何でしたか?」

 フィアレディーは無言でミス=メイデイの言葉を聞き終えると、もう一人に視線を移して話しかけた。

 筋骨隆々、しかしその上でなで肩、垂れ目というアンバランスな気弱そうな男だ。

 今もフィアレディーから向けられた視線で肩を震わせ、その様は、悪事を白日の下に晒された犯人の如き怯え様だ。

 「は、ハイ。

 が、学園内と周辺を見回った所、人気の無い場所の壁がほんの僅か崩れていて、梯子が立て掛けられた痕跡が僅かに地面に残っていました。」

 「人数は解りますか?」

 「イエ……すみません。そこまでは……………ゴメンナサイ……………。」

 巨体を縮こめて消え入るような声で謝罪をする。

 「結構。

 皆さん、聞いての通りです。

 本学園は現在、正体不明の犯罪者の侵入を許しています。

 本日は全授業を停止して全職員で学園内の捜索。見つけたらその段階で一報を。

 もし見つからなかった場合、明日以降は通常授業に。

 生徒達には三人の事を事故死として説明。手の空いている者は二人以上での校舎及び宿舎の巡回をして不審者捜索を続行。

 発見次第生徒の無事を最優先にして、行動して下さい。

 未曽有の危機。厳戒態勢で挑む様に。

 無論、魔法の行使、武器の携帯を許可します。施設の破壊よりも不審者の制圧を優先して下さい。

 意味は、解りますね?」

 その場に居た人間全ての緊張感がその疑問符一つで一層強まった。

 「以上。それでは学園内の捜索をお願いします。」

 その場に居た全員が散開していった。


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