If2:理不尽は死を覆す
スペックの違い?生まれの違い?人数差?財力差?権力差?人望差?理不尽?暴力?偶然?
そんなもの如何様にも踏み躙れる。
例えば、相手の不意打ちを予め調べて知っておく。こうすれば不意打ちは無効化され、どころか、不意打ちを仕掛けて来る相手に不意打ちのカウンターを喰らわせる事が出来る。
そう、予め準備をしておけば不意打ち一つで致命傷を与える事だって出来る。
時間、工夫、想像。
可能性を否定せずに研鑽をすれば、その果ては理不尽さえ凌駕する。
指先で摘まんでも手に付かない蜘蛛の糸、強力な色素を含んだ植物、強烈に甘い蜜を創り出す花に猛毒の蜜を創り出す花に水に溶けにくい蜜を創り出す花…………。
日中、倉庫を掃除する時に自作の香水を使っただろう?
その材料を採取する際、これらも手に入れていた。忘れていたかね?
私はそれらを自室で加工して日常使いの道具に偽装してあった。
そして、倉庫掃除の後、それを取りに行き…………後はお解りだろう?
連中が不意打ちを喰らわせに来た時、私は連中の脳を揺らすだけではなく、針を突き刺しておいた。
と言っても、主要な血管を貫く訳ではない。中枢神経を傷付けた訳でもない。
単なる顎への一刺し。
無痛の針に細工はしなかった故、痛みはあるが、打撃の痛みでそんな事には気付かない。
真夜中の月明かりではそんな小さな、しかも目立たない場所にあるソレはまず気付かれない。
そもそも軽傷でさえないそれは見つけられたとしても、気にも留められない。
毒の蜜がたっぷり仕込んであるソレを気にも留めず、私をノコノコ追いかけて来た。
遅効性のソレは私を追いかける事で全身を巡り、最終的に全身に毒が巡り切った所で階段から転落する。
気絶すれば一気に毒の巡りは鈍くなるが、寸前まで走り回せる事で毒は十分巡り、死因は毒殺となる。
転落させて殺さなかった理由はそこに有る。
その後、脳筋教師の方へ。
こちらは少し露骨だっただろう。
安い挑発。煽る様な嗤い。怒りを敢えて誘った。
激しく動き回る様に、血圧を上げる様に、血流を促進させる様に。
こちらの方は脳筋教師が派手に動く関係上。そして、職員棟が近くにある関係上、短期決戦が望ましかった。
故に、挑発して血流を促進+魔法を全力で使わせる事で毒をより速く、確実に巡らせた。
昼間、魔法を使った時。最後、崩れ落ちる寸前は息も絶え絶え、酸欠でまともに動けていなかった。
あの魔法は身体能力の向上。しかし、それは筋力のみ。臓器やその他器官の処理能力は向上しない。
だから反射神経もそのままで動きが単調になっていた。
要は、毒を分解する能力は通常時の肉体と変わらない。
ただし、血流や心拍、血圧は急激過ぎる運動で加速する。
だから直ぐにコレには毒が巡って自爆した。
目の前では脳筋教師がうつ伏せで突っ伏して、途切れ途切れの呼吸で何かを口にしようとして。
「ガボッ!」
血を吐いていた。
全身が紅潮し、所々発疹が現れていた。
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