学長と朝礼

「コォー貴なーる我が学園のセーイト諸君!オ早う御座イマァース!」

後期初日の朝。校庭に集められた生徒達の視線は大きな台座の上でふんぞり返った女に向けられていた。

 「あれは誰かね?私は見た事が無いのだが?」

 今まで学園で見た事が無い奴だ。

 「あれはこの学園、アールブルー学園の学長。ミス=エレベスタ=バーリアです。

 普段は世界を飛び回っているそうで学校には居りませんが、こうして学期の始まりには学園にいらっしゃって。訓話をなさるのです。」

成程、アレが……………か。

 三頭身有るか無いかの大木の幹の様な体に派手なピンクのドレスを身に纏い、指には金色の大きな宝石が嵌め込まれた指輪が幾つもギラギラと輝き、何処で買ったのか解らない紫色の眼鏡を掛けていた。

 紅髪が逆立った様に巻かれ、唇は不自然に大きく、顎が三重に弛んでいた。

 「凄まじく特徴的な学長だ。

一度見たら生まれ変わろうが記憶に残っているだろう。

記憶喪失の私が言うのだ。間違い無い。」

 「えぇ、確かに。学園には年二回しか居ませんが…………十二分に顔役と言えるだけのインパクトが有りますね。

 …………………………はい、否定はしません。」

 インパクト抜群の学長が話を続ける。

 「ワータクシッ!ハっ!ガークゼントッしましたよぉ!」

 ミュージカル風に元々喋る為に判別が難しいが、多分これは…………怒っている。な。

 「キークッ、所によれーヴァッ!宿舎が焼け落ちた理由は火の不始末ですとか…………。

 弛ルルルルルルルルルンデらっしゃる!」

巻き舌過ぎて最早何を言っているかが解らなくなりそうだ。

「シェリー君、これは……………………この喋り方は怒りの余り脳味噌が茹だった結果とかでは……………」

「無いです。これが学長先生の通常の口調です。」

 鞭を問答無用で振るう教師も中々な迫力だったが、これはこれで迫力だ。

 「こ~カラワッ!当分私も学園に居まーすッ‼

 弛ルルルルルルルんだ精神をぉ、鍛え直しナサーイ!

 学園をぉ、た―テ直す為に多大ナ寄付をシテクレェタ方々の厚意に応えるべくッ!

 ビビッ、勉強にイソシームのデェスッ!ハィッオシマイ!

 アァ、ミス=フィーアッレディー!

 ハナシは終えるので寄付してくれた素敵な方々の名前を読み上げてクダサイッ!」

そう言って学長はヨチヨチペンギンが歩く様に台座から降りて行った。

入れ替わる様に台に上ったのはフィアレディー。

 「今回の火災の際に焼失した学園の復旧の為に義援金を出して下さった方々は以下の通り。

 ・レッドライン家一同

 ・ヴェスリー家一同

 ・アンダン家一同

 ・カレシム家一同

 ・バレン家一同

………………………。」

教師の話は矢張り長いものだ。嗚呼、端的に述べられないものだろうか?

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