台風へと変わる

「姉様、大丈夫ですか?」

夜、二人の妹が私を心配して部屋まで来てくれた。

幸い、既に腹痛は治まり、気分も良くなっていた。

「オーッホッホッホ!大丈夫よ!心配かけたわね。」

痛みは治まり、気分は良くなった。が、今日の出来事を聞いて気分はまたしても最悪になった。

「大勢の前でアイツが恥をかかせた……ですって⁉」

二人の妹達がされた屈辱の出来事を聞いて耳が真っ赤になるのが解る。

「アノォォォォォォォ!!!」

「‼」

「あ……の…」

妹達が少し怯えている。

「!……オーッホッホッホ。御免なさい。驚かせてしまったみたいね。」

怒りは収まらないが、何とか平静を装う。

しかし、私とて決して怒っていない訳では無い。

痛かったはらわたが煮え繰り返っている。

私と私の妹達に危害を加えた代償は高くつく。

「二人共、事は最早、勝負などと遊んでいる場合では無くなってしまいました。」

私が真剣な目をして二人を見る。

二人も私の心を察して目を真っ直ぐに見つめる。

「解っています。」

「それはもう。」

二人共心は同じの様ね。

「もはやこれは遊びでは無く、レッドライン家の名誉と誇りの問題。いえ、貴族とそうでないものの格の違いを分からせる、理の問題です!」

誰が言い出す訳でも無く、目の前に己が右手を出し、皆が重ねる。

「我々の誇りを取り戻す!

あの女に罰を!

我らは高貴であるのです!」

こうして、シェリー=モリアーティーを破るべく、三人のレッドラインは協力する事となった。





「本日分終了。ご苦労様、シェリー君。」

「本日も御指導有り難う御座います教授。教授こそ、お疲れさまでした。」

勉強の最適化&ついでに(魔)改造プログラムは功を奏している。

勉強に関しては下手をしなくとも上級生や教師相手でも十二分に渡り合える。

それ以外は実戦量が圧倒的に少ないが、そこらの暴漢数人ならばナイフを持っていても遅れは取るまい。

「…………………」

シェリー君を見れば、勉強は終わったが、未だ少しし足りないのか、緑色の装丁の教科書を引っ張り出して読んでいる。

「何事も程々にしておきたまえ。」

「申し訳ありません。教授に言われて改めた部分を少し実践してみたくて………教授に教わった公式や思考法を使うと面白い様に問題が解けますし、成長を実感できます。昨日まで苦労していた事が、今日になって出来ている。解らなかった物や未知の物が自分の中で見つかり、知る事になる。自分が豊かになったようです。

勉強って、ここまで楽しい物なのですね。」

満面の笑みで応えるシェリー君。

あぁ、ここ迄言われては無下に『直ぐに眠れ』とは言えない。

まぁ、問題は無い。

「解った。私が折れる。

その代わり、10ページまでにしておきなさい。」

シェリー君の顔が目に見えて明るくなる。

「解りました!」

シェリー君の部屋の灯りが消えたのはそれから12分後の事だった。






フッ


「さぁ、順当に。こちらも仕上げておこう。」

シェリー君が眠った後、音を立てず、誰にも…シェリー君にも気付かれず、私はランプを手に提げて部屋の外に出た。

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