台風接近中


「オーッホッホッホ。準備は良くてミリネリア?セントレア?」

「フフ、フフフフフフ。大丈夫ですよ。メーテル姉様。」

「ハハハ、目にもの見せてあげましょう。メーテル姉様。」

早朝。三人のレッドラインは部屋の中で最終的な作戦の確認を行っていた。

「では、二人共、時間稼ぎの方を宜しくお願い致しますわよ。」

「「任せて下さい。」」

三人は決心を胸に部屋を出て行った。







本日、昼休憩を終え、三限目の授業にて。

「ここは実際の値は0.12大きい。

このまま実際に行使すれば不発にこそならないが、予定している出力で発動は出来ない。」

何時も通りの授業風景。魔法の理論に関する退屈な内容だった。

シェリー君は私の補足情報を緑の装丁の教科書に一言一句漏らさずに書き加えている。

最早教科書なのかノートなのか解らない。

「教授は………魔法を習った事が無いのですよね?」

シェリー君が感心と困惑混じりの声で問いかける。

「あぁ、魔法は全く記憶に無い。

私は記憶喪失だが、純粋な知識に関しては記憶が有る。

武術において体をどう動かせばいいか?どういった植物がどんな効能を持つか?どうすれば物を効果的に壊す事が出来るか?人間の何処の臓器が如何いった働きをするか?どういった科学現象が存在するか?

その全てが十二分な精度で、この世界で実際に行使できている。

しかし、魔法に関しては『魔女が箒に乗って飛ぶ』程度の、夢物語という知識しか無い。

魔法に関してはシェリー君の方が年季としては先輩と言っても構わない。」

「ですが、教授はまるで偉大な魔法使いの様に様々知っておられますよね?それは一体……。」

「あぁ、魔法というのを基礎から学ばせて貰った。

その結果、魔法というものが『理論や体系の有る現実的な技術』という様に定義づけが出来た。

理論が通じるのであれば、それは最早私の得意分野、『数学』の領域となる。

重力が有り、科学反応が有り、摩擦が有り…………であるならば、魔法という変数を理解する要素は既に揃っている。

今度、機会が有れば、シェリー君に私の魔法を見せてあげよう。」

「…………見たい気もしますし、見たくない、危険から目を背けたい。という気もします…………。」

危険………か。

危険云々言うのであればシェリー君は先程からこちらをチラチラ見る6つの目を危険視した方が良い。

私にとっては造作も無い、恐れるに足らない目。しかし、シェリー君にとって、あまり良い物とは言い難い。

………まぁ、問題は無い。




キーン コーン カーン コーン

授業終了の鐘が鳴る。

次の授業もこの教室で行われるため、移動は要らない。

が、

「ミス=モリアーティー?御免なさい。先程、ミス=フィアレディーに『速やかに教員棟に来る様に。』とあなたに伝えるよう言われていたのですが、すっかりその事を忘れていたのです……。

直ぐに、職員棟に言って貰えないかしら?」

娘(小)がシェリー君の元に来て、そう言った。

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