犯罪解説講座


「で、あるからして、幻覚魔法は魔力を相手に流し込んで相手の肉体と脳のそれぞれの認識をずらす事で起こる矛盾を応用した…………………」

朝、教室にて。今は魔法に関する論理の授業が行われている。

無論犯人はこの私だ・・・・・・・・・!」

そんな事は関係無い。思いの限り声を大にして叫ぶ。

といっても私の存在を認知出来る人間は一人しかいないのだが。

「きょ、教授⁉いきなり何を言い出したのですか⁉」

シェリー君がいきなりの私の発言に仰天する。

「いや、特に意味は無いし解りきったカミングアウトをしただけだ。

シェリー君は、真似をしない様に。『犯人は私だ!』なんて言うのは禁忌タブー中の禁忌タブーだ。

それ迄の行動全てを水泡にしてしまうのだからね。」

「……………しませんよ?」

授業を一番後の席で聞きながらシェリー君は並行して会話をしていた。

「教授、あの…………先程は一体何をなさったのですか?」

「?何がかね?」

「今朝の食事の話です。

食器、二回目の食器が割れた時に、身体を動かして私の食事とミス=メーテルの食事を入れ替えていましたよね?

そして、それよりも前、食堂に来たばかりの時・・・・・・・・・・何かをなさっていましたよね?

一体何の為にあんな事を?

無駄な事では………当然有りませんよね?」

「おめでとう、君は犯人に辿り着いた!」

「⁉⁉⁉⁉⁉?⁉?」

奇々怪々意味不明な発言に対してシェリー君が目を白黒させる。

だが、解って欲しい。

私はどんな犯罪者相手でも負ける事は無い。

私はどんな名探偵相手でも負ける気がしない。

故に、通常の犯罪者には絶対に向けられる『疑いの目』を私は向けられたことが無い。

ビシビシビシ

…………筈だ。

こうやって言われる事は、疑いの目を持たれる事は実に新鮮なのさ!


「先ず、私の行動の前に説明すべきことが有る。あの娘(大)は朝食の時に、君に毒を盛ろうとしていた。そして、皿が割れた時、正確には娘(小)が娘(大)の合図を受けて意図的に皿を割った時に、君がそちらに視線を向けている内に懐の瓶から毒をスープに入れていた。実際に毒を盛った訳だ。

気付かなかったかね?娘(大)がしきりに懐を気にしていたのを。」

「…………そう言えば、何かをしきりに確認していた様に見えました。」

「次からは、気になったことが有る場合、違和感覚えた事が有る場合は、何故そう思ったのか?何故その違和感は起きているのか?を考えたまえ。きっとそれは役に立つ。

さぁ、話を戻すと、協力して『視線を逸らす役割』と『毒を入れる役割』に分けてシェリー君のスープ皿にまんまと毒を入れた訳だが、おめおめ私が飲む訳が無く、偶然皿が割れた様に・・・・・・・・・装って・・・皿を割らせ、皆の視線をそちらに向けさせた。」

「?そんな事、何時の間に⁉」

「予め、食堂に来たばかりの時に、シェリー君と娘(大)が配膳を終えたタイミングで誰かが皿を割る様に、積み重ねられた下側の一枚の皿の裏側には油を塗らせて貰っていた。それが朝一番に身体を借りた理由さ。

 こうして、配膳が進み、毒入りスープが目の前に有る中、丁度食器が割れた訳だ。

そうして、毒入りスープと無害スープを誰の目にも見つからない様にすり替える事に成功した。

何か質問は有るかね?」

 「…………大丈夫ですか?毒入りスープを相手に飲ませた。という事ですよね?それは。」

シェリー君は不安そうに前の席を見る。

視線の先には娘(大)が居ない、(中)と(小)だけが座る席。

 「自分で用意した毒だ。死ぬようであればそこまでだったと諦めて…」「教授?」

 無言の迫力を出して来る。気圧される程私はヤワでは無いが今回は私が折れよう。

 「心配する事は無い。食器が溶けない程度の毒ならば、いざという時の解毒は容易いとも。」



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