集団逃走5

罠を仕掛ける時の『あるある』&『気を付けるべき事』。

その1:罠が不発である事。これは仕掛けが複雑になればなるほど起こりやすく、不発だと慌ててボロを出す場合が有る。

その2:罠に自分が引っ掛かる事。これは罠の把握が出来ていなかったり、相手が自分以上の力量を持っている場合に起こり得る。

自分の妨害・攻撃手段を奪われるのは厄介だし、何より、間抜けな奴だと嗤われる。

その3:罠の加減を間違える事。

仕掛けた糸の高さを高くし過ぎて気付かれる。毒矢の発射角を間違えて外す。といった不意打ちを悟られる事も痛いが、それは未だマシだ。

何より酷いのは………毒ガスを仕込んだ時に分量を間違えて周囲一帯毒の海にしてしまったり、爆弾の火薬の量を間違えて自分諸共吹っ飛ばしたり……という巻き添えや大惨事にある。罠という性質タチの悪い代物なだけに分量ミスや角度や高さのミスが予想外の大惨事を引き起こしかねない。

その4:罠の回収が面倒。

何よりもこれだ。

後々、完全に無関係な人間を罠に掛ける真似をしかねない。

これは認める訳にはいかない。

我々は悪魔でも殺人鬼では無いのだから。

つまり、何を言いたいかと言えば、自分の罠をわざわざ我々に使わせる隙を作ったのは正に間抜けそのものだ。という事だ。

まぁ、そのお陰でこうやって村人全員を救出して、全員取り敢えず無事、洞窟の外まで出られたのだから、その間抜けには感謝せねばならないのだがね。



「出られた!」「有難う!」「シェリーちゃん!」「久々の太陽だ………」「ウォォォォ!」「空気が    空気が! 空気だぁぁぁぁぁぁぁぁ!」「ウェオェェェェ………………」

村人たちが久々の太陽と毒の無い空気を受けて歓喜と叫びと悲鳴と今まで抑えていたストレス………兎に角凄まじい騒ぎになっていた。

あんなところに閉じ込められて有毒ガスに曝されていたらこうもなる。

さぁ、それはいいが、我々はまだ安心する訳にはいかない。

洞窟内は今、てんやわんやの大騒ぎ。

しかし、ある程度落ち着いたらすぐに村に追手が来る。どう考えても来る。

このままこの穴だらけの洞窟を放置しておけばあっという間に村人全員が賊の凶刃の餌食となってしまうのは当然。

「あと少し……………」

肩で息をしながら、それももう辛そうなシェリー君が吐息でかすれた声で自分に言い聞かせる。

ここまで来れば上出来だ。

「手伝おう。」

「………します。」

声がかすれて最早言葉も怪しいか。

よし、では、必要最低限の力で最大の成果を引き起こそう。

「皆さん!未だ安心しないで下さい!未だ追っては来ます。

足止めをするので逃げて下さい。」

かすれ声も怪しい声帯を酷使して村人たちに呼びかける。

ここから先は、周りに人が居ると危ない作業だから…ね。

「おぉ………ぉぉ。」「気を付けてね。」「ありがとう。」「シェリーちゃん、無事で。」

好き勝手に言いながら山を下り始める。

全く、『自分達も何かやる!』くらいの事を言う気概の有る奴はいないのかね?

「では、 ポート、ぉ願いします…」

洞窟に向かっていくシェリー君。


「宜しい、ではいくぞ。

(579,1357,8673)(-402,1653,702)(1608,263,180)(25,236,714)(-250,-1238,334)(-351,220,1090)。」


『石礫』


石の弾丸が私の指定した場所に誤差5㎝以内に吸い込まれていく。

僅か数cmの石。しかし、その石が的確に急所を撃ち抜き、最大限の効果を発揮する。




パラパラパラ……………

石が撃ち込まれた周囲から小石や砂が転がり落ちて来た……

パラパラパラ…………カラカラカラカラコロコロコロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ

ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!



小石や砂が石に変り、大きな石、岩、転がる物が大きくなってきて、最後には………轟音を従えて、土砂崩れとなって幾つもある洞窟が全て塞がれた。




「や………りまし……た……有りがとぅご ざいま         」

気が抜けてシェリー君の体が前のめりに、投げ出されていく。


フッ


そのまま寝かせる訳にはいかない。

さぁ、サービスだ。





シェリー君の体を借りると私は山を下り、その場を後にした。


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