完全犯罪者の超絶技巧
「さて……………どうするかね?」
気絶した小僧を縛り上げ、シェリー君に問いかける。
「この小僧は本拠地から指示を飛ばされてきている末端。文字通りの小物で脅威は無いも同然だ。が、だからと言ってこのままにしておけば不審に思って追加の兵隊がやって来るだろう。最悪、総力戦だ。
そして、シェリー君がやった事に気付かれた途端、この村の命運は尽きる。
無論、私達だけなら余裕で逃げ切れる。だが、村人全員、老人と子どもを逃がすのは無理だ。たとえこの場に居る村人を全員逃す事が出来たとしても、未だ攫われたままの村人が居る。
どちらにしろ、血は免れない。
次の一手、シェリー君。君は、何を考えるかね?」
末端を相手に荒事をしては本体に気付かれて総力戦になる。それは真実だ。
そして………否。今回の場合、『しかし』だ。シェリー君の行った行為はこれから打つ手によって最悪手になる可能性が有ると同時に、最善手になる可能性が一つ。一つだけ、有る。
「教授…………力を貸して頂けませんか?」
冷静で、それでいてその内に激しさを秘めている。
「力を貸すのは
敢えて意地の悪い言い方をする。
「私は………助けたいです。
この村に生きる人を、この先彼らに涙を流させられる人々を……………。」
「解った。それは解った。解っている。が、どういった手段を用いるのかね?具体的にどうするのかね?」
「………………こんな事をしている人達を、こんな事をしている組織を………壊滅させます!
誰一人殺す事無く。です!」
無理難題。
無茶苦茶。
無謀としか言い様の無い馬鹿馬鹿しい理想。
が、しかし、それをこんな危機的状況で言ってのける事は評価しよう。
どんなに苦しかろうと、無理難題が有ろうと、それでも曲がらない、曲げない信念。
素晴らしい!
「教授、先ずはこの方たちの本拠地に潜入します。
皆さんを救出しようにも、賊を壊滅させようにも先ずは情報が必要になります。
この方に変装してなりすませば、侵入できるかと考えたのですが、いかがでしょう?教授は変装などに関して心得は…………?」
全く、冴えている。と思ったら呆れた言葉が飛び出して来た!
「馬鹿を言わないでくれたまえ!」
全く!『変装に関して心得は………?』だって⁉
有るに決まっているだろうとも!
名探偵になる際に変装技能は不要である可能性があるが、完全犯罪者になろうという人間にとって、変装技術は必要不可欠!しかも、変装技術の
誰だね?名探偵とか言われながら変装技術を持っていて、しかもその技術が割と完成度高めの奴は⁉
変装技術が最も必要とされる職種は『怪盗』・『名犯罪者』のどちらかに決まっているだろう!
ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシ!!!
今までに無い程の激痛!頭痛が凄まじい!
が、しかし、それでも、これだけは言わせて貰おう。
「このモリアーティーの変装術を舐めて貰っては困る!」
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