かいてきなたび 4
ゆっくりゆっくり進んでいった馬車はそうして陽が暮れる前に停まった。
今夜はここで野宿な様だな。
「シェリーは馬を放してやんな! あんた達は水汲みと火を起こして飯の準備を!!
アタシは辺りを見てくるから!」 「解りやした。」
「気を付けてよぉ。」
「解りました。お気を付けて。」
「あぁ、ついでに手頃な肉でも調達してみるさね!」
そう言って赤毛の女は逢魔ヶ時の岩場に消えていった。
すっかりキャラバンの一員になっているな。シェリー君。
彼女が消えると同時に男二人はてきぱき動き始める。
シェリー君は一歩出遅れる
「何か手伝える事は有りますか?」
訳がない。
私の教えを毎日受け、あの学園を生きているのだ。
この程度で遅れを取るほど柔な生徒では無くなりつつある。
単純な一手二手なら小娘の先を行くことは容易いだろう。
「もう終わったんですかい?」
「マジかよぉ…俺達ノロマじゃねぇかよぉ…。」
二人が感心しつつ慌てたようにそう言った。
「あの…申し訳ありません。」
その雰囲気に乗せられてつい謝ってしまうシェリー君。
「謝る要因は無いだろう?
速いに越したことはないのだから。」
「………ですが…。」
「……ならよぉ、手伝ってくれやすかい?」
「今日はスープだぁ。
野菜刻むのが手間なんだ。手伝ってくれるかぁ?」
二人が気遣ってシェリー君に仕事をさせようとする。
「はい!喜んで!」
シェリー君の顔が晴れてそちらに向かっていく。
いやぁ、この短時間にシェリー君が彼ら彼女らと打ち解けて、違和感が無くなって来て、私は嬉しい!
まるで元々4人組だったかのようだ。
さて……………この三人を如何やって始末しようか?
三人共始末すれば証人は居ない。馬車に乗っていてすれ違った人間は居ないし、シェリー君が三人と一緒に居た所を見た人間も居ない。
要は………どうやって始末しようが口封じさえ出来れば如何にでもなる。という事だ。
・近くに生えている毒性の強い植物を燻して毒殺or毒性の強い植物の串で肉を焼いて食べさせる。
・近くにいる野生動物に夜襲をさせてシェリー君以外を餌にする。
・寝ている隙を突いて一人ずつ刺殺
・ソーイングセットの糸の一端を三人の首にくくり付け、馬をもう一端に繋げ、馬を走らせることで一気に絞殺。
他にも今の状況で始末できる方法は幾つも有る。
彼らは許されざる行為を行った。
それは決して許される事柄では無く、償えもしない。
その対価として命を先ず貰おう。
ン?どんな犯罪行為を彼らが行ったかって?
色々有るが、別に些末な事は如何でも良い。
どんな宝物を盗むよりも許されない、許せない罪。
それはシェリー君とこんな短期間で凄く仲良くなった事だ!
おのれ三人組ぃ!
私だって慕われてはいるけどまだまだ距離を感じていたのに。
ちょっと一線引かれているな。如何しようかな?近寄るべきか、彼女の意志に任せようか?とか考えていたのに。
簡単に一線踏み越え追って!
何よりシェリー君が凄く嬉しそうなのが輪をかけて憎たらしい!
アレか?教授だからか?教授だから駄目なのか?
おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!許さん!三人組ッ!
手塩にかけた娘をどこぞの馬の骨とも知れない男に盗られた親の様に……………というか、ただのみみっちい嫉妬の炎が教授の瞳の内で燃え上がった。
教授がもし、犯罪計画を実行したら、世界一しょうもない犯罪の動機になっていたであろう。
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