モリアーティー剣術
モリアーティー剣術。
アールブルー学園にて剣聖シェリー=モリアーティーが編み出した独自の剣術。
その剣術の特徴は一刀で相手の命を奪う必殺と、攻撃が一切当たらないという性質にある。
例え相手が先に斬りかかっても躱され、こちらが致命傷を負う為、この剣術を使う人間を相手取る時は決して攻撃してはいけない。
見かける前に逃げるのが最上作である。
一つ幸いな点は、この剣術を使える人間がこの世で一人しかいない点にある。
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シェリー君と私は、豚嬢を消した後、話し合いをした。約束をした。
「教授、余程の事が無い限り、特に、授業中は私に任せて頂けますか?」
「?それは、どういうことかね?
授業中は手を出されないから大丈夫。という事かね?
とても、そうは見えないのだが………………………?」
豚嬢が消えてから、数週間、その間は平和であった。
豚嬢が消えた恩恵。と言ったところだろう。
しかし、平和は束の間だった。
そこら中の令嬢から聞くに堪えない罵詈雑言がまた、聞こえ始めた。
それは、授業中でも行われていた。
「いえ、私は未だ至らぬ身。
教授に頼るのは良いのですが、その結果、私の怠慢を招きそうなのです。
ですから、学びの時間は私に成長する機会を頂けないでしょうか?
大丈夫です!授業中は皆様方も下手な事は出来ません。」
その言葉に、私は彼女の覚悟を感じた。
という事で、彼女の学問の邪魔をしないように、私は授業中においては原則、傍観をすることに決めていた。
危険を感じたら、私に替わるという約束の元。
そんな訳で、私が今、シェリー君の身体を借りて剣を握っている。
相手はほぼ無傷。
体力も有り余っている。
こちらは片手を使えない。
体がだるく、重い。
「教授、『モリアーティー剣術』というのは…………何でしょうか?
私もモリアーティーですが、そのような剣術の流派、聞いた事が有りません。」
「ン?
聞いた事が有る訳無いだろう?
今まさに、流派が作られたばかりだ。」
「ハッ⁉⁉⁉⁉」
「私は剣術を習っていた覚えがない。
記憶喪失だがね。」
「キョ!教授ぅぅぅぅ⁉」
頭の中でシェリー君が騒ぐ。
安心したまえ。こんな木剣で人を殺すなど………………造作も無いが、やらないさ。
それに、相手が小娘ならば、剣など無くとも『モリアーティー格闘術』で勝てる。
「休憩は御仕舞ですか?
随分長くってね。」
「ミス=ヨルダン。ごめんなさい。少し、手を痛めてしまって……………………」
「あらぁ、あの程度で?
イエ、ごめんなさい。
あの程度でも、下民には身に余ったかしら?
ごめんなさい。保健室で休んだ方がいいのではなくってよ?」
意地の悪い笑みだ。
まぁ、問題無い。
「いえ、幸い片手は無事です。
このまま、お手合わせ願えますか?」
そう言って負傷した手を腰に、もう片方の手で剣を構える。
何事も無かったの様な顔で。
「……………………身の程をしらなくってよ。
この私を相手に片手とは、良い度胸をしていましてよ!
グズフゼイガ。」
吐き捨てるようにそう言って木剣を構える。
その顔は怒りと殺意に溢れていた。
まぁ、可愛いものだがね。
「宜しくお願いします。」
ポーカーフェイスで煽る。
「キッ!」
ナクッテ嬢が突進してきた。
『基本その5:闇雲な突進=自殺』
単調な軌道の剣で、しかも遅い。
避けるなど容易い。
「えぃ!」
上段から振りかぶって来る木剣を左足を軸にして後ろに回転。回避した。
「え?」
ナクッテ嬢は空を切った木剣に妖精でも見たかのような反応をしていた。
いきなり動きが変った。それだけでも素人剣術には対応しきれないだろう。
「はい、一回。」
避けるだけでは済むわけが無い。
勢いよく振り下ろしてガラ空きになった首筋を木剣で撫でる。
もし、これが真剣だったら。という月並みな表現で悪いが、
「一回、死にましたね。」
自然な笑みをナクッテ嬢に向けた。
一回目。頸動脈の切断。
「調子に乗るものでは無くってよ!」
後ろに回り込もうとする私に乱暴な横薙ぎを繰り出す。
「おっと」
そんなモノ目を瞑っても避けられる。
しゃがんでこれを回避。
真下から木剣を突き出し、あばらの下から剣を刺す。
「二回目です。」
二回目。心臓を一突き。
「キィィィィィィィィイイイイイイ!!!!!!!!!!!!」
顔を真っ赤にしたナクッテ嬢が乱暴に木剣を振り回す。
勝てるわけが無い。
カキン!
乱暴に振り回された木剣が弾かれ、ナクッテ嬢の手の中でコントロールを失って回転。
切っ先が自身の喉元に触れた。
「三回目。」
不慮の事故で喉笛を一刺し。
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