学園外の冒険


ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、


ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、




 足元の視界を塞ぐ草を踏んで帰り道を作りながら進んでいく。


 草は眼前の森の方へ行くほど大きくなっていく。








 「……………教授?」


 「何かね?シェリー君?」


 「外出というから何事かと思えば、野草採集ですか?」


 「あぁ、大体そんな所だ。


丁度、消毒液を見て思いついた。


 アルコールと一部の野草を組み合わせれば即席の香水擬きが作れる。


 昨日の夜、この近辺にいろいろな薬草が有るのが見えたのでね。


 目潰しに使え、香りという証拠になり、逆に香りの証拠を掻き消し、アルコール故によく燃える。しかしてそれを危険物とは誰も思わない。淑女の身だしなみ程度にしか誰も思わない。


 理想的なアイテムの一つだとは思わないかね?」


 顔が綻ぶ。


 肉体的不利を一時的に引っ繰り返し、証拠隠滅や追跡に使え、しかも火災や爆発の材料になる。挙句日用品としてのステルス性。






 まぁ、ここに来たのには他にも色々見たいものが有った。というのも有るがね。


 「植物に詳しくなるという事は大概の環境においてプラスに働く。


 毒や薬、食料、虫除け等の衛生品……………様々な用途に使われている。


 これらの知識が役に立たない場所が有るとしたら、砂漠のど真ん中か石とレンガのみの町、でなければ活火山の火口くらいのものだ。」






 フフフフフフ、改めて考えてみると楽しい事この上ない。


 さぁて、如何使おうか?


 如何しようか?








「大丈夫…………ですか?」


 ビクビクしているのが解る。


 「大丈夫だとも。ここを監視するような輩は居ない。問題無い。安心したまえ。


私は人や物を消す魔法に関しては得意分野だ。」








































 バレなければ犯罪ではない。


 とでも言いたげ。




 生意気なのよ!豚の分際で!


 人間様の正義の鉄槌を豚如きが躱せるなんて思い上がっちゃって!




 悪さをした豚には泣きわめくようなお仕置きを。


 罪無き善なるものには褒美を。




 これは絶対!








 一時は見失ったけど、ノロノロ草を踏んでいたお陰で簡単に見つかったわ。


 そして、そのお陰で見えた!


あの女、遂に尻尾を見せた!




 『・本校敷地外に出る際は教師に申し出た上、必要書類を提出後、外出する事。


 許可無き外出は厳罰を与える。』




 これはまごう事無き校則違反。


 しかも、この先には人があまり来ない、手入れのされていない森。


 良からぬ事を更に重ねるか、でなければ証拠を捨てに行くに違いない。






……………私も違反になるだろう。


 しかし、この行動には淑女として不正を許さない心がある。


 ミス=フィアレディーも許してくれるだろう。








 逆に、あの豚下民はもうこの学園に居られない。


 この私を虚言と卑怯な手で穢した。


 『・他者を害してはならない。』


 これも破った。


 もうあなたは豚小屋にさえ居られない。


 この高貴なる私を虚仮にした罪、相応しくない場所に存在する罪。


 この学園から出た後もその罪に対する罰を受けなさい。








 下賤の豚と高貴な人間は違うのよ。


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