学園外の奸計

とでも思っているのだろう。あの豚嬢は。












 何の訓練も受けていない小娘の尾行擬きに気付かない程このモリアーティーは耄碌していない。


 そして、残念ながら、君がここに来ることは私の計算の内だ。


 わざわざドアの開閉音や鍵の音を聞かせ、丁度豚嬢が部屋から顔をのぞかせるタイミングを計り、撒きそうになったからわざわざこうやって草を踏み固める作業で目立つようにして…………………………。


 面倒な事をした。






 そして、豚嬢は無駄な事をしている。


 『私が校則違反をしている。』だとか、『私がこれから証拠を捨てようとしている。』とでも思っているのだろう。


 残念ながらどれもこれも見当違いだ。


 推理小説における道化な警察でも見たような気分だ。






 私は校則違反をしていない。


 先程、豚嬢が落ちた時、ミス=フィアレディーの元へ行っただろう?あの時、許可を貰いに行っていた。


 そこで要求された許可の為の書類を急ピッチで作成。音も無くミス=フィアレディーに書類を渡し、その場で受理。


 またしても音も無く自部屋に戻り、外出の準備をしたその後、わざわざ音を立てて外出をした。






 まるで私が無許可で学園を脱出し、悪巧みをしているように見せるため。


 豚嬢を自滅させるために。








 彼女は自部屋で謹慎するように言われ、それを無視。


 挙句、勘違いで無断外出。




 今、正義はどちらに有るだろうかね?








ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、


ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、


 道を作る。


 見失われては困るからね。


 しっかりついてくると良い。


 その先に有るのは落とし穴だけだ。






 さぁて、もうそろそろ足踏みも飽きて来たな。


 周囲の草は丈が大きく、シェリー君と然程変わらない大きさになって来た。


 頃合いだ。












イライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライラ


イライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライラ


イライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライラ




 未だなの⁉


 さっきから足元の草を踏んでノロノロ進んでいく。




 もしかして、勘付かれた?


 まさか、豚風情にそんな知能等在る訳が無い。


 私に気付いている訳が無い。




 さぁ、私の掌で存分に踊りなさい。


 私に動かぬ証拠を見せなさい。


 豚と人間の違いを見せてあげるわ。






 この私の策に溺れて死ぬと良いわ。






ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、


ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、ガサッ、


…………………………………………………………………………………………………………


…………………………………………………………………………………………………………


…………………………………………………………………………………………………………


……………………………………………………………………………………………………




 足が止まった。




 ダッ、ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ




 と、思ったら、草むらの中に入り込んでいった。






気付かれた!


 さっきまで豚の居た場所に走り出す。


 草むらは深く、姿は見えない。


 ダッ、ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ


 しかし、草の揺れ方で何処に居るかがはっきりと解る。


 矢張っり畜生風情の考えは単純で笑えて来る。


 逃がさない!


ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……………




 ノッシノッシと、服が汚れるのも構わずに豚嬢は走る。




 後で侮辱と不正の罰として弁償して貰いましょう。


 あぁ、彼女の残りの人生は奴隷かしら?はたまた畜生として生きるのかしら?


 歪んだ楽しい妄想で顔が歪む。






ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ タン ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ………




 草むらの動きが一瞬止まり、何か硬いものを踏んだ音がした。


 前をよく見ると草むらに隠れて大きな石が有った。


 転ばせて撒こうとでもしたのかしら?愚かな豚!






ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ…「ギャッ」、ジャバーン!






 石を飛び越えて走ろうとした次の瞬間。


 視界が真っ暗になり、身体が何かに叩き付けられ、水が襲い掛かって来た。


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