当日譚へと繋がる


 「あの行動の意味。それは簡単だ。


 豚嬢を激昂させて、最初にここに来た時の様に地響きがする勢いでここまで来て貰いたかったからだ。


 そうしないと床が抜けないからね。




 おやつ時でいきなり天井から水アルコールが漏れて来たら誰だって機嫌は悪くなるさ。


 そして、彼女は手に持ったおやつをそのまま持ってここに来る。


 そして、穴に嵌ってクッキーという校則違反の物的証拠を残しつつ、学校の設備(床)を壊すという失態を皆に目撃され、罰される訳だ。」








 「あの…………何故アルコールを?


 水道ならそこに有りましたのに……………」


 もっともな疑問が来た。


 が、少し考えて欲しかった。


 惜しい。わざわざ私がミス=フィアレディーを部屋に入れた理由はそこに有るのに…………。


 「アルコールは揮発性が高く、飲食物では無い。


 そして、アルコール綿=液体という等式は成り立ちにくい。『綿』だからね。


 更には天井からアルコールが染み出し、豚嬢を怒らせ、床に嵌り…………という時間経過で天井と床の証拠が乾いて消えるからさ。」


 クッキーの匂いが充満していたあの部屋では消毒液の匂いは掻き消される。


 豚嬢の部屋の天井とドレス、シェリー君の部屋の床のアルコールは蒸発して証拠は無い。


 絞った綿も火を付けて燃やし、証拠は隠滅。アルコールのお陰でよく燃えた。


 あとはシェリー君の部屋の換気をしておけば天井からの液体は影も形も残らない。


 豚嬢の虚言か幻覚くらいに思われる。


 即興であればこの程度かな?


 他に御質問は有るかね?」








 「宜しいでしょうか?教授。」


 「何だね?シェリー君。」


 「教授は、知っていたのですか…………?」


 「何をかね?」


 「ミス=コションの身に起こった災難です。


 今の話を聴く限り、教授は部屋を出る前に、彼女がそうなる事を予知していたかのように思えるのですが………」


 予知。


 フフフ、予知ねぇ。


 「私は魔法を使えると言っただろう?」


 「はい。ですが、あのように完全な予知をする魔法は私の知る限り、神話の中でしか存在しないのですが………………………もしかして、教授は出来るのですか⁉未来予知が!」


 目を輝かせて羨望と期待のまなざしを向ける。


 イヤぁ、照れるな。


 「ハハハハハハハハ!


 この程度なら君にでも出来るさ。


 100人が解いて100人が同じ解に辿り着く。


凡才も天才も全てが同じ真実に辿り着くのが数式さ。




それでは、先ほど言った『私はこの件にどこに関与していたか?』の2つ目を説明しよう。」






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